バス、タクシー、船、飛行機、建物、道路など全般的にバリアフリーに遅れていた日本は優先順位を付ける必要があった。

公共交通で高齢者や障害者などの移動に関して、まず着手されたのが鉄道だった。日本の鉄道駅は立体的にできた駅が多く、ホームに行くには階段を上り下りしないといけない。高齢者や車いす利用者にとって段差は大きな課題だ。バリアフリー化は、1日の利用者数が5000人以上の鉄道駅からはじまった。当時はバリアフリーやその費用を負担する意識や仕組みがなく、駅舎のバリアフリー化予算の3分の1を国が、3分の1を地方が負担する仕組みが新たに作られた。

バリアフリーの対象駅は徐々に拡大されている。1日の利用者数が5000人以上の駅から3000人以上、さらには2000人以上へと引き下げられていき、鉄道駅のみならず、バス、タクシー、船、飛行機、道路にも広がっていった。

国土交通省によると、2019年度末時点で1日の利用者数が3000人以上の鉄道駅でエレベーターの設置などによって段差が解消されたのが92%、ノンステップの乗合バスの普及が61%、3000人以上が利用する旅客船ターミナルは100%、福祉タクシー車両の普及は37,064台だ。

これらを推進した要因となったのが、2000年の交通バリアフリー法(高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律)、06年のバリアフリー法、そして改正バリアフリー法などの法律だ。

交通バリアフリー法制定から20年が経ちバリアフリーは劇的に進んだ。盛山正仁氏の著書『ユニバーサル社会を目指して』(ユニバーサル社)によると、20年間のバリアフリーの取り組みについて、日本身体障害者団体連合会会長、日本視覚障害者団体連合、全日本ろうあ連合会長、全国老人クラブ連合会会長など障害者・高齢者の団体の会長らも高く評価しているという。

世界レベルのガイドラインが日本語に

現在開催中のパラリンピックでも、その成果は見て取れる。

CGTNの報道によれば、中国代表選手が選手村の環境を称賛したという。視覚障害者用の歩道、部屋のトイレ、専用の手すりや取っ手が取り付けられ、選手村には義足や車いすなどを修理・メンテナンスする「修理サービスセンター」などが開設され、バリアフリーが規範化されている。

その理由の一つは、オリンピック・パラリンピック開催に合わせてつくられた「Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドライン(2017年策定)」をもとに、東京が世界水準に引き上げられてきているからだ。

ガイドラインは国際パラリンピック委員会(IPC)の「アクセシビリティガイド」を踏まえていて、障害の有無にかかわらず、相互に人格を尊重し合う共生社会の実現を目指すものとして作られた。

ガイドラインは競技会場のみならず、会場までの経路、宿泊施設などについて、非常に細かな数値基準を用いて規定している。

例えば公共交通については「輸送手段」で触れられており、車いすが円滑に乗降できる幅や車内スペース、飲食エリア、トイレ、視覚障害者に配慮した設備・機能についての情報が記載されている。観戦スペース、座席数、動線、視線など、日本で遅れている車いす利用者に対応した設計の案内も。そのほかには、障害者が利用しやすいドア幅やスイッチ操作など宿泊施設のバリアフリーについても触れている。

バリアフリーを身近に
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