その上、ボルトン氏はその性格故に米国の各政府組織の連絡調整を経て大統領に可能な限りの選択肢を示す、という国家安全保障担当補佐官としてのコミュニケーション能力を著しく欠いていた。ボルトン氏は要所で正確な状況認識を示すものの、自らが認識している状況すら無視したイデオロギー的な方向の政策を推進しようとし、マティス、ティラーソン、ヘイリー、ムニューチンら別の閣僚がボルトン路線に疑義を示すとそれを官僚機構のサボタージュのように見下している。
ボルトンは自らの回顧録の中で大統領の意思決定をサポートする重要な位置におりながら、彼の単純な思考に疑問を呈すクライアントとその組織を馬鹿にするダメな経営コンサルのような発言を繰り返しているだけの存在でしかない。
好意的に受け止める米国の政界関係者は皆無か
したがって、同書の内容は、ボルトンの、ボルトンによる、ボルトンのための「ボルトン史観」に過ぎず、トランプ大統領に同情することはなくとも、同書内容を好意的に受け止める米国の政界関係者は皆無だろう。
同書は外国のメディアが内容を騒ぎ立てる以外は、米国の敵対者にとって同政権の主要メンバーの性格を知り得る手がかりを提供した以外には何ら価値がないものだと言える。ボルトンの外交安全保障の専門家としての名声は彼が手にした報酬とともに終わったと言える。