自分とは異なる人々への想像力

在宅診療に取り組んでいる医師からこんな話を聞いたことがある。東京都でも119番通報は年々増えているが、押し上げている最大の要因は75歳以上の人々からの通報だ。問題はその中身である。その中には、病院搬送が必要ないか、軽い症状の人が少なくない数含まれている。医療的なケアは搬送された病院でもできるが、根本的な問題解決をするには当人の社会的背景まで診ないといけない。そうしなければ、何度でも119番が繰り返されるのだ、と。

人生の最期をどう選ぶかは重要な問題であり、議論を喚起することには賛同するが、選択に行き着く以前に、多くの困難を抱えている人も存在しているのが社会の現実である。

今、問われているのは自分とは異なる人々への想像力ではないか。自分とは違う選択をする人々を、あたかも社会にとって不合理な選択をする人々、あるいは理解できない存在と切り捨てるような物言いは肯定できないと私は思う。たとえ、その論法でケンカに勝てたとしても。

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