「曖昧さに耐える力」が試される一冊
極め付きは「新型コロナのワクチン接種は危ない!」という言葉だ。いつの時代もワクチン忌避論はあったが、「時の権力が推し進めるワクチン接種は製薬会社の圧力」といった左派的な反権威主義とワンセットだった。本書はさすがにそうした類いの主張はないが、帯にここまで強い言葉であおるような論拠は示されていない。せいぜいが「打ったほうが危ない」程度の仮説の提示までだ。
本書はオンライン書店上で圧倒的なコメント数が付いており、話題の書であることは間違いない。それを支えているのは、小川という右派論客の力だろう。
ワクチンへの警戒が不要だとは言わない。他国の状況とともに常にウオッチする必要はある。だが今の時代、ワクチン以上に警戒すべきは、論拠が不足したまま流布される極端なワクチン危険論だ。不安とともに極端な言葉が広がると、本来なら防げた感染症が防げなくなるリスクが高まる。危険論の着火点は、右派でも左派でもあり得る。今後も含め、「曖昧さに耐える力」が試される一冊なのだろうと思うのだった。
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