しかし、この説への反論は極めて容易である。若年層より高年層が分極化しているのは、ネットの利用頻度とはさほど関係なく、単純に年齢が上がるほど政治との接点が増えて、政治的関心が高まるためではないか。
高年層ほど政治への関心が高いことも、政治への関心が高ければ賛否が分かれる問題への態度は明確になっていくことも、社会調査で裏付けられている。田中たちの調査結果をもって、ネットは社会を分断しない、とは言えないだろう。
「インターネットと分断」はトランプ政権以降のアメリカで、多くのサイエンティストが挑む課題となった。日本でも近年、優れた研究がいくつか登場している。代表格は大阪大学の辻大介准教授(社会学)のものだ。
辻によれば、ネットをよく利用していると、排外主義者的な意識が強くなる人たちが出てくる一方で、反排外主義的な傾向を強める人たちも出てくる。彼の調査で確認できるのは、ネットと排外主義(反排外主義)の強まりが相関関係ではなく、原因と結果が結び付いているという「因果関係」にあることだ。
安倍政権の支持、不支持にもネット利用が関連しているという辻の最新調査もある。結論の新奇性で耳目を集めるのは大いに結構だが、それだけでは現実に起きている問題には対応できないこともまた事実である。
<本誌2019年12月31日/2020年1月7日新年合併号掲載>