星野リゾートの人事の仕組みが、さまざまなメディアで特集されている。役職に手を挙げる制度や、分業化せず1人の従業員がマルチに全ての業務を行うことなどが紹介されている。

それらをくくるキーワードは、「責任の分散を起こさせない仕組み」だと筆者はみている。強烈な当事者意識を起こさせる仕組みが働いているということだ。当事者だからこそ仕事が面白い。

キーエンスには、役割を全うする強さがある

また、別の事例では、社員の平均年収の高さが話題になるキーエンス。工場内のセンサー機器を手掛ける会社だが、従業員の平均年収は2110万円(2019年3月期)。その高収益を生み出す仕組みとしてよく紹介されるのが、徹底した役割意識だ。

営業は、取引先のキーマンを把握し、現場の悩みを詳細に聞き出す。いま何が困っているのか、何ができると助かるのか。その詳細なヒアリング情報を自社の開発担当者に提供し続ける。開発担当者はその膨大な情報を基に、まだ他社が提供していない機能を、どこよりも早く開発し続ける。

5月8日付の日経新聞にはこうある。


実は、営業担当者と開発担当者はほとんど顔を合わせない。資料の提示のみで新製品の説明を済ませるケースが大半だ。社内会議の時間すら惜しむのは、他社が同様の製品を出すまでに一つでも多く売るため。縦割りを徹底し、「新製品を高速サイクルで作り続ける」。

もうお分かりだろう。自分が何の役割を担うのかが明確であり、誰かがやってくれるだろうという「責任の分散」とは無縁の仕組みが構築されているのだ。

企業の盛衰を分ける「責任の分散」という概念。ぜひ、さまざまな企業の情報をこの視点で見てほしい。「責任の分散」が起こり始めた会社に未来はない。

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