以前からやっている方法であり、民間らしいと評価されている方法じゃないか。誰も絶対にダメなこととは言わないんじゃないか。本当に悪い部分だけ何とかすれば、それで済むのではないか。

3人の脳裏にはきっと、このような想いが浮かんだのではないか。3人の責任の範囲も微妙な状況で、前任の経営者まで否定することへの躊躇の気持ちも重なり、どこかで「責任の分散」が起こった可能性がある。

絶対に変えるという覚悟を誰も持たないまま、問題が大きくなっていった可能性があるのだ。

「スルガ銀行不正融資」、社員は会社をあきらめていた

一方、昨年世間を騒がせた「スルガ銀行の不正融資」問題では、昨年の9月に第三者委員会による報告書がまとめられている。その中では、社員の間に「責任の分散」が起きていたことが如実にレポートされている。報告書の中で、「『通報すれば改善されるのではないか』という期待が従業員には全くなかった」と指摘しているのだ。

もちろん、この報告書は、人事評価の仕組みに関する問題も指摘している。人事評価が特定の役員の意向で決められていたというのである。

そのような状況では、匿名性への信頼がなく社内の通報制度が機能しなかった部分も大きいと思われるが、同時に「どうせ無駄だから」「取り合ってもらえないから」という回答も多かったと記されている。明らかに社員は、自分には解決する役割などないと考え、やがて「傍観者」のようになり、「責任の分散」が起き、そして自らも悪事に手を染めていったのだ。

不正が蔓延する組織では、経営層にも社員にも「責任の分散」が生まれ、誰も本気で変えようとしない。やがて組織が腐っていく。

星野リゾートには、「責任の分散」を起こさせない仕組みがある

逆に、元気な会社、盛隆に向かう会社には、「責任の分散」を起こさせない仕組みが機能している。

例えば、星野リゾートを見てみよう。中核ブランドの「星のや」や「界」などだけでなく、最近では都市観光のためのホテル「OMO」の展開や重要文化財である「旧奈良監獄」を活用したホテル運営など、良い意味で世間を賑わせている。

筆者も星のやのファンであり、サービス業の研究対象として宿泊しているが、先日こんな経験をした。

「星のや東京」に宿泊した際に、「星のや京都」で見かけた従業員を発見したのだ。その従業員は確かに星のや京都に居られた方で、久しくその話題で盛り上がった。筆者は星のやでは2泊以上の連泊をすることが多いのだが、その従業員は翌日も、筆者の部屋があるフロアを担当してくれた。

帰り際に、「あなたがこのフロア担当でよかったです」と挨拶すると、「お客様が居られたので、担当のフロアを代わってもらったのです」とのこと。なんと、このフロアを担当することを自ら決め、周囲の了承を取り、自らサービスをしてくれていたのだ。

誰かがやってくれるだろうという「責任の分散」とは無縁