<採用が難しいので、せめて退職者を減らしたいのに、なかなか定着しない......。人と企業の関係が大きく変わろうとする中で、プロのキャリアコンサルタントによる「人間ドック」が注目を集め始めている>
企業の経営者にとって、人材確保が重要課題になっている。新卒、中途ともに、本当に自社で活躍できそうな人を見つけ出し、入社してもらうまでステップを進めていくには、相当なパワーとコストが掛かるからだ。
そのため、今いる従業員にいかに定着してもらうかという意識も高まっている。「リテンションマネジメント」と呼ばれるが、つまりは、優秀な人材が長期に渡り高い能力を発揮し続けてくれるように、就業環境を整備するなどの具体的な施策の導入がますます熱を帯びている。言い換えれば、退職者をできるだけ減らすための施策だ。
会社まで毎日通わなくてもよいように「サテライトオフィス」を整備したり、「副業・兼業」を認めたりというのも、リテンションマネジメントの一種。働き方改革と相まって、いま、人と企業の関係が大きく変わろうとしている。
そんな中、徐々に注目を集め始めているのが「セルフ・キャリアドック」だ。一般にはまだ知られていないが、厚生労働省が推進する制度で、定期的に、従業員自身に今後のキャリアや将来について考えてもらう仕組みを言う。健康状態を知るために「人間ドック」を定期的に受けるようなニュアンスだ。
このセルフ・キャリアドックとは、一体どんな制度なのか。そして退職防止にどうつながるのだろうか。
この種のテーマには、必ず2つの視点が必要になる。1つは、経営者の視点。もう1つが、働く側の視点だ。経営者としては、辞めないでほしいと願っても、従業員の側もここに居たいと思わなければ成立しない。
25歳以下の退職理由の26%は「やりたい仕事ではなかった」
そもそも、人が辞めることを決意する際の理由は何なのか。
人材会社のエン・ジャパンが昨年4月に公表した「退職のきっかけ」についての調査では、第1位は「給与が低かった」(39%)、第2位「やりがい・達成感を感じない」(36%)、第3位「企業の将来性に疑問を感じた」(35%)という結果だった。
一方、年代別でみると、25歳以下は「やりたい仕事ではなかった」が26%と、他の年代に比べて突出して高い。
「作っているものが、何に使われてどのように活躍しているのか教えてもらえず。いきなり仕事の手順だけ覚えさせられてやりがいもなく、自分が成長できないと思った」(23歳男性)、「社会に貢献しようと言うが、会社が見ているのは目の前の利益ばかり追求していると思ったため」(24歳男性)というコメントも紹介されている。
つまり、経営者視点と働く側の視点では、物事の受け止め方に大きなギャップがあるということだ。一番もったいないのは、このギャップを埋められずに人が辞めていく時である。