ただし、イギリスは国民投票で “離脱” を選択した後、国内政治でもEUとの離脱交渉でも大きな混乱に陥った。それを横で見ていた各国のEU懐疑派は、いまや “離脱” ではなく “内部改革” を目指すようになっている。

そのため今後極右政党の影響力が増せば、EUの規制が弱められることもあり得る。

それは各国ごとの独立性を回復することにはなるだろうが、その裏返しで加盟国ごとにルールや規制が違うことになり、域内移動もこれまでほどスムーズでなくなることも想定させる。

そうなれば外部からみて “一つの市場” としてEUが持つ魅力が低下し、海外企業にとっては進出のブレーキにもなり得る。ロンドン市議会は今年1月、EU離脱によってロンドンだけでも29万人が職を失ったと報告した。

たとえ “離脱” を選択する国が増えなくても、EUとしての一体性が損なわれれば、それだけでも経済に悪影響が出るという懸念が各国政府にはあるのだ。

ブランド価値を引き下げる内向き志向

第二に、自由、人権、多様性などの面で、ヨーロッパのブランド価値に傷がつきかねないことだ。

フランスの極右政党 “国民連合” マリーヌ・ルペン党首は、大戦中にフランス警察がユダヤ人を狩り出してドイツに引き渡した歴史を無視して「フランスにホロコーストの歴史はない」と発言し、ユダヤ人団体から抗議されたことがある。

スウェーデンでは極右系の民主党が政権を握った後、デモのなかでイスラームの聖典コーランを焼く行為が合法と認定された。

ドイツのAfDは「民族的にドイツ的でない市民」の集団追放について協議していたことが発覚している。

これらは一定数の支持者から歓迎されていて、その意味では民主的といえなくない(民主主義が道徳的に正しい結果を導くとは誰も保証できない)。

ただし、それが他者の権利や尊厳を否定する論理であることもまた確かだ。

少なくとも、こうした内向きの態度が多くの国で賞賛をもって迎えられるかは疑問で、これまで自由や人権の価値を称揚してきたヨーロッパの影響力にもかかわる問題である。

中ロの影響力の浸透
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