中国に「やましさ」はないか

もっとも、先進国にダブルスタンダードがあるとしても、それが中国の正当性を意味するとは限らない。

張軍大使はあたかも「ガザの状況よりよほどマシ」といわんばかりに、「ウイグル自治区の住民は社会的安定、経済発展、宗教的調和を享受している」と強調する。

しかし、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が2022年8月のレポートで、中国当局によるウイグル人の取り扱いに「人道に対する罪に当たる懸念」を示したことには「事実無根」と述べるにとどまり。都合の悪い情報を事実上スルーしている。

これに加えて、先進国のダブルスタンダードを批判する中国は、ガザ侵攻に関してパレスチナ、イスラエルに二股をかけている。

中国は1988年、いち早くパレスチナを「国家」と承認した国の一つで、ガザ侵攻をめぐっても「即時停戦」を求めてきた。

しかし、その一方で中国はイスラエルとも良好な関係にある。Global Timesが先進国のダブルスタンダードを批判しながらも、イスラエルを名指しで批判していないことは示唆的だ。

この関係を反映して、2021年10月に国連総会でウイグル自治区における人権問題を非難する43カ国の共同声明が発出されたとき、イスラエルは中国批判に加わらなかった。「イスラーム過激派のテロへの対抗」の論理であらゆる問題を封印しようとする点で、イスラエルは中国と共通するといえる。

ただし、その二股は結果的にイスラエルによるパレスチナ人弾圧に中国が加担することにもなっている。

昨年5月、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは中国メーカーHIKVISION製の顔認証機能付き監視カメラがイスラエル占領下のヨルダン川西岸に配備されていることを明らかにした。HIKVISIONのカメラはウイグル自治区でも住民監視に用いられているとして、アメリカ政府のブラックリストにも掲載されている。

そこにはパレスチナと良好な関係を演出しながらイスラエルの占領政策に協力する矛盾がある。

「どっちもどっち」なら中国に有利

とすると、多くの国からみれば、程度の差はあれ「どっちもどっち」なのだが、そう見られるのは先進国にとって不利で、中国にとってやや有利といえる。

大義名分で「どっちもどっち」なら、ほとんどの国にとって合理的な選択は先進国とも中国ともほどほどの距離感でつき合うことになる。

「選ばれる立場」になった自覚がない先進国
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