それよりも注目すべきなのは、ウェストの行動がアメリカ社会の実像を映し出していることだ。彼の一連の振る舞いは、アメリカの民主主義を体現するものと言える。アメリカ独立革命は、市民を主権者、国家を市民への奉仕者と位置付けた。それ以降のアメリカの歴史は、個人の権利を少しずつ、しかし着実に拡大し、既得権を突き崩して能力主義に置き換えようとする闘争の歴史だった。

その結果、アメリカの文化は、エリートを民主主義の精神に反する存在と見なす傾向がある。専門家の知識はしばしば揶揄の対象になり、非民主的、言い換えれば「非アメリカ的」なものと決め付けられる。

ドナルド・トランプとカニエ・ウェストは、「誰でも大統領になれる」というアメリカンドリームをゆがんだ形で実践しようとしている。2人は、専門家やエリートを拒絶するアメリカ文化の申し子と言える。

その意味で、アメリカの慣用句を使って表現すれば、トランプとウェストは「アップルパイと同じくらいアメリカらしい」存在だ。問題は、リンゴの中にしばしば害虫が入り込んでいることなのだが。

<本誌2020年7月21日号掲載>

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