この直後、影響力のある右派の評論家ラッシュ・リンボーが、メッソニエは「ディープ・ステート(国家内国家)」の一部だと非難。嘘と左派との共謀によってパニックをあおり、トランプの評判を落とそうとしていると主張した。この発言に、「速い思考」の人々のかなりの部分が共鳴した。

コロナウイルス対策をできるだけ成功に近づけるために、政府はよい知らせも悪いニュースも含めた真実を伝えなければならない。真実を把握するために「遅い思考」を心掛けなければならない。そして国民が政府を信じ、その行動を支持するだけの信頼性を確保しなければならない。

残念ながら、コロナウイルス危機において最も重要な2カ国、中国とアメリカは国民に不信感を抱かせ、「遅い思考」よりも「速い思考」に走っている。

中国政府は国家のメンツを守るために真実を犠牲にする昔の姿勢に先祖返りした。トランプのアメリカは、大統領を完全無欠に見せ掛けるために醜悪な嘘を垂れ流し続けている。

「真実を知ることはあなたを自由にする」と、CIA本部の入り口に掲げられている。恐怖というウイルスに身も心も侵食されないためには、「遅い思考」が必要だ。

<2020年3月10日号掲載>

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2020年3月10日号(3月3日発売)は「緊急特集:新型肺炎 何を恐れるべきか」特集。中国の教訓と感染症の歴史から学ぶこと――。ノーベル文学賞候補作家・閻連科による特別寄稿「この厄災を『記憶する人』であれ」も収録。
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それを考えれば、世界中の人々が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を実際以上に危険視することはほぼ確実だ。そして世界中の専門家や政府当局者は真のリスクを大急ぎで把握しようとしているが、政府の対応がパンデミックをもっと悪化させる可能性はかなり高い。