アベノミクスからの脱出の過程が重要に
経済では、アベノミクスの生みの親が亡くなったことで、日銀の黒田東彦総裁の続ける金融大緩和や長期金利抑制のための日銀による国債大量買い入れは、その後ろ盾を失ったものと見なされるだろう。
今回の銃撃事件の報とともに円相場が急上昇して株価が急落したことがその予兆である。アベノミクスからの脱出の過程をうまくコントロールしないと、円高とインフレ高進という奇妙な(そして最悪の)混合現象が現れるだろう。
元首相が暗殺の対象となり、それがかくも大きな衝撃を日本や世界に与えているのは、アベノミクスの形で安倍晋三がまだ日本の基調を定めていたからだ。
彼が残した問題は、アベノミクスだけではない。「世界で埋没した日本の地位を引き上げる」という仕事は残っている。米政治の先行きが読めない不安定な世界で、民主主義・自由貿易の枠組みを守っていく仕事も残っている。
安倍元首相が大きく進めた官邸主導の政治は、官僚側の忖度を呼び、やる気のある青年たちを公務員職から遠ざける結果を生んでいる。ロシアとの北方領土問題では、米ロが対立する環境の中で不可能な前進を高望みして、不要で有害な譲歩を繰り返した。こうしたことを起こさないためには、何をどうしたらいいのか。
そして、これは首相がどうすることのできるものでもないが、いつまで続くか分からない安定にどっぷりとつかって活力を欠き、元首相の暗殺さえも風俗問題であるかのように忘れてしまうだろう日本の社会。われわれはもっと危機感と責任感を持って、子供や孫、そして自分たちのために、もっとましな日本を遺すべきだと思う。日本にはそうなるだけの力がある。
安倍元首相、長い間本当にご苦労さまでした。首相の考えたこと、成し遂げたことが、きちんと、つまり特定の政治勢力に利用される形でなく、記録に残され、後世に伝えられることを望みたい。
1921年の原敬暗殺、30年の浜口雄幸襲撃はいずれも一匹狼的な犯人によるものだった。以後、32年の五・一五事件の犬養毅、36年の二・二六事件における岡田啓介首相暗殺未遂(岡田の義理の弟を誤認して殺害している)になると、暗殺というよりは軍内部の跳ね上がり分子によるクーデターに近いものとなる。犬養暗殺以降は軍部が自らの台頭を背景とし、政治家たちを震え上がらせて軍国主義への扉を開いた。
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