「英外相は私のお尻にキスでもしてろ」

ロシア産エネルギーを優先するあまり、核大国との摩擦を恐れるあまり、2008年にプーチンがジョージア(旧グルジア)に侵攻した時も、14年にクリミアを併合し、東部紛争に火をつけた時も、米国と欧州は、サーベルをガタガタ鳴らすプーチンに怯えて、付け入る隙を与えてきた。

キャメロン氏に対し、熱烈にトランプ氏を支持する共和党強硬派マージョリー・テイラー・グリーン下院議員は英スカイニュースに「キャメロンが何を言おうが、私には関係ない。彼は自分の国のことを心配していればいい。糞食らえ(私のお尻にキスでもしてろ)だ」と言い放った。

反ユダヤ主義、白人至上主義、極右陰謀論をまき散らすグリーン下院議員について、FT紙のルース氏は「20年に当選した当初は単なるジョーク扱いで相手にされなかった。しかし今やマイク・ジョンソン下院議長の座を脅かす存在だ」と警戒する。

グリーン下院議員は「ウクライナ政府はキリスト教徒を攻撃している。ウクライナ政府は司祭を処刑している。ロシアはそんなことはしていない。ロシアはキリスト教を攻撃していない。彼らはキリスト教を保護しているように見える」と発言している。

共和党強硬派「ウクライナは敵、ロシアは友」

今回、ジョンソン下院議長はウクライナ支援継続を求めて訪米したキャメロン氏との会談を拒否した。ウクライナは停戦と引き換えに東部ドンバスとクリミア半島をロシアに割譲すべきだとトランプ氏は漏らしている。ウクライナに武器を供給したいと考えている共和党員は少数派だ。

「共和党強硬派はウクライナを敵、ロシアを友とみなしている。それを孤立主義と定義するのは間違いだ。積極的親露派なのだ」とルース氏は指摘する。トランプ氏の推薦で共和党全国委員会委員長に選出されたマイケル・ワトリー氏は公然とウクライナを敵と呼んでいるという。

ルース氏によると、陰謀論の跋扈に絶望して政界を去った共和党議員の1人、ケン・バック氏はグリーン下院議員を「モスクワのマージョリー」と批判する。ウクライナが司祭を処刑しているという彼女のデタラメはクレムリンにつながる「偽情報トロール部隊」が震源地だ。

米紙ワシントン・ポスト(4月8日付)は「クレムリンにつながる戦略家やトロール部隊は米国の孤立主義を助長し、国境警備に対する恐怖を煽り、米国の経済的・人種的緊張を増幅させようとする捏造記事、SNSへのデタラメ投稿やコメントを何千と書いてきた」と報じている。

英誌エコノミストの大統領選予測では、バイデン氏はトランプ氏を44対43でリードする。「トランプ大統領が返り咲けば米国を孤立させるどころか、米国の外交政策をプーチンに有利な方向に転換させる」とルース氏は懸念する。

ウクライナ追加支援が米下院を通らなければ世界は悪夢を見ることになる。

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