ワクチン未接種で重症化、ICUに運び込まれる妊婦がアメリカで急増

2021年8月12日(木)17時02分
レベッカ・クラッパー

全米のデータを見ると、妊婦の感染者は冬のピーク時よりも減っているが、ワクチンの接種率が低い一部の州では、接種が始まる前の感染拡大のピーク時と比べ、妊婦の感染者が明らかに増えている。

新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が始まって以来、「感染状況はこれまでと比べものにならないほど最悪になっている」と、接種率が低い南部ルイジアナ州ニューオーリンズのオクスナー医療センターの産科医ジェーン・マーティンは言う。「医療も絶望的な状況で、医療者は疲弊しきっている。これはもはや人災ではないか」

この病院には、昨年の春にパンデミックが始まった当時とその後のピーク時にもコロナに感染して症状が悪化した妊婦が何人か入院していたが、最近ではそうしたケースはぐっと減っていた。

「それがここ1、2週間で急変した」と、マーティンは言う。今や毎日のように「重症化した複数の妊婦が運び込まれ」、その大半がICUに入っている、という。

マーティンはこの2カ月間に新型コロナで入院した妊婦の少なくとも30%を治療してきたが、その大半がワクチンを接種していなかったという。

妊娠中に呼吸困難になる悪夢

アメリカではマスク着用や密を避けるルールが廃止された時期にデルタ株が広がったことが感染の再燃につながったと、専門家は見ている。加えて、妊娠可能年齢の女性も含め、65歳未満のワクチン接種が春以降にずれ込んだことも感染の再拡大を容易にしたようだ。

テネシー州の幼稚園の教師、セーラ・ブラウンは妊娠が分かった時点で、ワクチン接種は出産後まで待とうと考えた。そのときにはまだ妊娠中の接種の安全性に関するデータがほとんどなかったし、36歳でいたって健康なブラウンは、「感染しても、ちょっとひどい風邪くらいだろうと高を括っていた」のだ。

だが昨年6月、最初は「鼻風邪かな」と思った症状が急激に悪化。血中酸素濃度が低下し、呼吸困難に陥って、ナッシュビルの病院のICUに入院した。

幸いにも娘のスージーは今年4月2日に元気に産声を上げたが、ブラウンは、接種を受けなかったことを激しく後悔したと話す。

「自分の体に小さな命が宿っているのに、うまく息が吸えない。赤ちゃんも苦しんでいると思うとパニックになった」

今、あなたにオススメ

今、あなたにオススメ