バッハ会長らの日本侮辱発言の裏に習近平との緊密さ

2021年5月26日(水)20時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

その緊密さがどこから来ているかと言うと、一つには「金のつながり」であり(アリババや蒙牛など)、もう一つには「投票行動の際に中国寄りの国の数が圧倒的に多いため、中国寄りになっておいた方が自分に有利」ということなどが考えられる。

2020年4月19日のコラム<トランプ「WHO拠出金停止」、習近平「高笑い」――アフターコロナの世界新秩序を狙う中国>にも書いたように、国連の専門機関や国連傘下の多くの国際組織が習近平政権によって乗っ取られているような状況だ。中国は大国を相手にせず、小さな発展途上国を大量に丸抱えする戦略で動いているので、「一国一票」の原則に基づく多数決議決の時には、中国に有利に働く。

情けない日本政府の無為無策

5月24日、アメリカのCDC(疾病予防管理センター)は日本への渡航に関する注意レベルを4段階中最高の「レベル4」に引き上げ、国務省も日本への渡航勧告レベルを「レベル4」に引き上げて、「渡航を中止せよ」という指示を出した。

本来なら日本は島国であるだけでなく国民の衛生意識は非常に高いので、政府さえ適切な方針を打ち出していれば、コロナ感染は防げたはずだ。

それが東京五輪直前になって、こともあろうにアメリカに見放されるほど、日本はコロナ対策に失敗したことを如実に表している。それでもなお、「アメリカのオリンピック委員会は選手を送り込むと言っているので関係ない」と白を切る日本政府には、「日本国民の命を最優先する」という考えは微塵もないことが明らかになったようなものだ。

重視するのは金と体裁か。

オリンピック精神とは「人間の尊厳」を重視して争いを無くし、一時停戦をしてでも平和裏に人が集い不公平を無くすことにあるのであって、これは「人の命を最優先すること」につながるはずだ。隔離した状態でのスポーツ競技にいかなる意味があろう。

その精神すら見失っている日本に国家の理念などを要求しても無理だろうが、目を覚まして欲しい。

IOCの裏には中国があり、IOCにとっては日本国民の命などはどうでもいいことなのである。金が入り、権威を保つことができればそれでいい。

そのようなことのために、「私たちの命」は「道具」にされていいのか。

私の友人のご親族は、先日、入院できずに自宅隔離のままコロナで亡くなられた。

これ以上黙っていることは罪悪でさえあるという思いに突き動かされ、本稿を書いた次第だ。


※当記事は中国問題グローバル研究所(GRICI)からの転載です。

[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

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