放任型は強盗・恐喝、溺愛型は強制性交・わいせつ......少年非行と親子関係の強い関連

2021年3月24日(水)13時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

<非行の罪状と家庭環境の関係を見ると、親の養育態度で傾向が違うことがわかる>

非行は家庭環境と密接に関連すると言われている。血縁による一次集団としての家庭は、子どもの人格形成に強い影響を及ぼすからだ。

父親がいないなどの外的な形態面を見るだけではなく、内部の親子関係の状態にまで目を向けなければならない。家庭における子どもの人格形成は、血がつながった親子間の相互作用を通してなされる面が強い。とりわけ重要なのは、上位の立場にある親が、どのような態度で子どもに接しているかだ。

少子化が加速度的に進行している今日、過保護や溺愛というような、養育態度の歪みが起きやすくなっている。一方で、長時間労働や共働きにより、子どもをほったらかしにする親も増えている。以前は、同居する祖父母や近隣地域の人々が補ってくれたが、核家族化や地域社会の崩壊が進む中、それはなかなか期待できない。現在では、子を放任する親の問題も出てきている。

2010~19年の10年間で、刑法犯で検挙された14~19歳少年は47万4457人となっている(警察庁『犯罪統計書』)。警察庁の資料には非行少年の家庭環境の調査結果も出ていて、保護者の養育態度の統計表もある。父親と母親のデータが載っているが、子どもと接する時間が長い母親の養育態度の内訳を示すと<表1>のようになる。

放任、拒否、過干渉、気まぐれ、溺愛という5つのカテゴリーが設けられているが、全体の7割強はいずれにも該当しない普通の母親だ。養育態度の歪みで最も多いのは「放任」で、非行少年の母親の5人に1人が該当する。他のカテゴリーはわずかだが、「溺愛」が2.1%とこれに次ぐ。

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