「音と舌への電気刺激を与えるデバイス」で、耳鳴りの症状が改善と研究結果

2020年10月15日(木)17時35分
松岡由希子

<耳への音と舌への微弱な電気刺激という2つの方法を組み合わせて、慢性耳鳴りの治療に特化した治療デバイスが開発されている...... >

耳鳴りとは、実際には音が鳴っていないのにもかかわらず、「キーン」や「ジー」といった不快な音が鳴っているように聞こえる症状で、世界人口の10〜15%の人にみられる。その原因も耳の病気や自立神経の乱れなどさまざまで、現時点では、臨床的に推奨される医薬品やデバイス治療はないこともあって、悩みを抱える人も多い。

慢性耳鳴りの治療に特化した治療デバイス

アイルランドのスタートアップ企業ニューロモッドは、慢性耳鳴りの治療に特化した治療デバイスを開発した。耳への音と舌への微弱な電気刺激という2つの方法を組み合わせることでニューロンを調節する「バイモーダル・ニューロモジュレーション」のアプローチにより、Bluetooth対応ヘッドホンを通じて両耳に音を送りながら、「タングチップ」と呼ばれる独自のマウスピースで舌先に電気刺激を与える仕組みだ。

ニューロモッドは、2016年から2019年にかけて、アイルランドの首都ダブリンのセントジェームス病院と独レーゲンスブルグ大学で計326名の耳鳴り患者を対象にこのデバイスの安全性、有効性、忍容性を検証する臨床試験を実施した。被験者に12週間にわたって1日60分間使用させたところ、被験者の86.2%が「12週間『レニアー』を使用した後、耳鳴りの症状が改善した」と報告した。

また、このデバイスの使用期間が終了した後、12ヶ月にわたって追跡調査を実施。その結果、66.5%が「使用を終了してから12ヶ月経っても、耳鳴りの症状が改善している」と答えている。一連の臨床試験の結果は、2020年10月7日にアメリカ科学振興協会(AAAS)の学術雑誌「サイエンス・トランスレーショナルメディシン」で公開されている。

Neuromod Devices Limited

音と舌への電気刺激を組み合わせて耳鳴りの症状を改善する

音と舌への電気刺激を組み合わせて耳鳴りの症状を改善する手法については、米ミシガン大学の研究チームでも2014年から2016年にかけて21名の被験者を対象とする臨床試験を実施しているが、ニューロモッドによる今回の臨床試験は、欧州2カ国での大規模な臨床試験で一定の成果が示された点が評価されている。

ニューロモッドのCSO(最高科学責任者)で米ミネソタ大学のヒューバート・リム准教授は、臨床試験における一連の成果について「非常にワクワクしている」とし、「耳鳴りに悩まされている多くの人々を救うべく、バイモーダル・ニューロモジュレーションによる治療の開発に引き続き取り組んでいく」と語っている。

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