プーチン終身大統領に道を開いたロシア「全国投票」は不正まみれ

2020年7月6日(月)18時20分
ブレンダン・コール

<投票は最初から違法、プーチンの大統領続投を国民が望んだように見せるためだけの仕掛けだった>

ロシアで1日に行われた憲法改正の是非を問う全国投票では、8割近くが改正案に賛成の票を投じた。だがロシア国内の専門家からは不正選挙を疑う声が挙がっている。

今回の改正案には、最低賃金や年金額に関する新たな規定のほか、結婚は「男女間のもの」と定めるといった社会に関する規定の改正なども含まれる。だが目玉は24年に任期満了を迎える予定のウラジーミル・プーチン大統領が2036年まで続投できる新たな規定で、それ以外の項目は単なるカムフラージュだとの批判も聞かれる。

ロシア中央選管によれば、賛成票は全体の77.92%で反対(21.27%)を大きく上回った。タス通信が伝えたところでは、投票率は67.97%だったという。

だがロシアの選挙専門家で、過去の選挙でも不正に関する調査を行なってきたセルゲイ・シュピルキンは、この結果に疑いの目を向ける。

シュピルキンによれば、一部の選挙区で賛成票がほぼ100%に達している点や、また、投票率が高い投票所で賛成票が多い傾向があるのも不正を疑う根拠になっているという。

シュピルキンは8800万票について調査を行い、その結果をフェイスブックで公開した。フォーブズ・ロシアの取材に対し彼は、最大で2200万票が不正に賛成に投じられた可能性を指摘している。

「近年のロシアの選挙でこれほどの規模で票の操作が行われた例は他にない」と、彼はフォーブズ・ロシアに語っている。2016年のロシア下院選でも同様の不正は見られたが、これほどの数ではなかったという。

不正票は5800万票とも

実際の賛成票の割合についてシュピルキンは65%前後には達したと見ている。一方、投票率は43%程度だったはずだという。

独立系選挙監視団体ゴロスによれば、不正選挙の疑いがあるとの訴えが2100件以上、届いているという。

最大で5800万票が違法に投じられた可能性があるとの見方もある。ロシアの法律では憲法改正の是非を問う選挙では期日前投票が認められていないのに、6月25日から7月1日にかけての7日間にわたって投票が可能だったとモスクワ・タイムズは伝えている。

一方、野党政治家のアレクセイ・ナワリヌイはユーチューブに投稿した動画の中で、全国投票は「完全な嘘ででっちあげであり、われわれは認めない」と述べるとともに「今こそ団結して力を尽くし、9月には(与党)統一ロシアを打倒しなければならない」と語った。ロシアでは来年9月に議会選挙が予定されているが、日程は繰り上げられる可能性もある。

英王立国際問題研究所の上級研究員ニコライ・ペトロフは、今回のロシア政府の狙いは、投票という形を取ることで改憲が深刻な政治スキャンダルになるのを防ぐことにあったと考えている。実のところ、今回の「全国投票」は国民投票とは異なり、実施するハードルも低い。

<参考記事>ロシア大統領は2036年までプーチン? 憲法改正で「終身大統領」に現実味
<参考記事>止まらないプーチンの暗殺指令

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