セクハラと闘う女たちに私が100%は共感できない訳

2020年2月19日(水)18時00分
デーナ・スティーブンズ

本作には16年夏のよどんだ空気がこびりついている。大統領候補のドナルド・トランプがケリーに下品な言葉を吐く実際の映像も挿入される。

エールズの誘いを拒んで干されたカールソンが、社風に不満を訴えて解雇されたのがこの夏。彼女が提訴に踏み切ったのを機に不祥事が次々に露呈し、ケリーもエールズにセクハラを受けたと告白する。

物語の中心はケリーとカールソンだが、興味深いのは脇役だ。超保守を公言するケイラは実は女性に引かれており、民主党支持のレズビアンであることを隠して働く同僚ジェスと関係を持つ。

2人がジェスの部屋で結ばれ、ヒラリー・クリントンのポスターの下で笑いながら職場をけなす場面は自然体で素晴らしい。

ケイラはエールズに現在進行形で嫌がらせを受けているが、ケリーらがセクハラを経験したのは過去のこと。それでも上司に外見をあげつらわれ、服従を強いられるつらさは痛いほど伝わる。

3人が団結してエールズを辞任に追い込む姿には、胸がすく。だがケリーが18年に人種差別を擁護する発言で転職先のNBCを解雇されたことを思うと、連帯のこぶしを振り上げる気にはなれない。

彼女たちが正義を勝ち取ったのは喜ばしい。ただし映画館で2時間を共にしたい人たちだとは、正直思えない。


『スキャンダル』
[監督]ジェイ・ローチ(『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』)
[脚本]チャールズ・ランドルフ(『マネー・ショート 華麗なる大逆転』)
[出演]シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー、ジョン・リスゴー、アリソン・ジャネイ、コニー・ブリットンほか
[配給]ギャガ
[公開]2月21日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

©2020 The Slate Group

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