サウジ攻撃の内幕 イランはなぜアラムコを狙ったのか

2019年11月30日(土)11時05分

サウジアラビアにある世界最大の石油精製施設がドローンとミサイルで攻撃される4カ月前、イランの安全保障当局者が、厳重に防備を固めたテヘランの施設で会合を開いていた。

出席者の中には、ミサイル開発や秘密作戦も管掌する精鋭部隊、イスラム革命防衛隊の将官も含まれていた。

5月に開かれたこの会合の主要議題は、米国をどう罰するか。画期的な核合意から離脱した米国は、経済制裁を再開し、イランに大きな打撃を与えたていた。

「今こそ剣を抜こう」

革命防衛隊の司令官、ホセイン・サラミ少将が見守るなか、ある上級指揮官が口を開いた。この会合の様子をよく知る4人の関係者によれば、「今こそ剣を抜いて、彼らに教訓を与えるべきときだ」。この指揮官はそう述べたという。

強硬派は、米軍基地を含む価値の高い目標を攻撃することを主張した。だが、最終的に浮上したのは、米国からの徹底反撃を招きかねない直接的な対決には至らないような計画だった。

イランは、米国の同盟国であるサウジアラビアの石油関連施設をターゲットに選んだ。イラン軍当局者は5月の会合、さらに、少なくともその後4回の会合でこの案を検討した。

ロイターは一連の会合を知る関係者3人、さらにイランの意思決定プロセスをよく知る1人の人物から情報を得た。取材を通じ、サウジアラビアの国有石油会社サウジアラムコに対する9月14日の攻撃を計画する際のイラン指導部の関与が、初めて明らかになった。

4人の関係者によると、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は、厳しい条件付きでこの作戦を承認したという。イラン軍による民間人、米国人に対する攻撃は避けること、という条件だ。

ロイターは、イラン指導層が関与したという関係者4人の話の裏付けを取ることができなかった。革命防衛隊の報道官はコメントを拒否した。イラン政府は関与を強く否定している。

トランプ政権のある高官は、ロイターの取材で判明した事柄に対し、直接的なコメントをせず、「(イラン政府の)行動と、数十年にもわたる破壊的な攻撃やテロ支援の歴史こそが、イラン経済が低迷している原因だ」と語った。

サウジの石油施設攻撃を巡っては、イエメンの反体制勢力フーシ派が犯行声明を出している。だが、米国もサウジもこの声明を一笑に付し、先進的な攻撃手法から見て、首謀者はイランだとしている。

サウジアラビアは戦略的なターゲットだった。この国は中東地域においてイランの主要なライバルであり、世界経済にとって重要な産油国だ。米国にとっては安全保障面の重要なパートナーでもある。

だが、何千人もの民間人犠牲者を出したイエメン内戦に関与し、昨年はワシントンを拠点とするジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がサウジ工作員に殺害されたことで、米議会との関係がぎくしゃくしている。

サウジアラビアは何十億ドルもの国防費を投じているが、アラムコの施設2カ所が17分間にわたって18機のドローンと低空を飛ぶ巡航ミサイル3発によって攻撃されたことで、同社が脆弱な状態にあることが明らかになった。

この攻撃により、フライスの石油関連施設とアブカイクにある世界最大級の石油精製施設で火災が発生した。サウジの石油生産量は一時的に半減し、世界全体の供給量が5%失われた。石油価格は急騰した。

ポンペオ米国務長官はこの攻撃をイランによる「戦争行為」だと非難し、イラン政府は米国から追加制裁を受けた。米当局者によると、米国はイランに対してサイバー攻撃も行ったという。

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