イスラム過激派、警察と銃撃戦で2人死亡 厳戒態勢の断食月迎えたインドネシア

2019年5月8日(水)06時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

壊滅逃れたインドネシアのテロ組織

インドネシア国内ではJIDのほかにも「ジェマア・アンシャルット・タヒド(JAT)」、「ヌガラ・イスラム(NII)」などのテロ組織が確認されている。いずれも「IS」に共感した過激派組織メンバーで、テロによる「イスラム国家」樹立を最終的には目指しているとされる。

過去には国際テロ組織「アルカーイダ」の影響を受けた東南アジアのテロ組織「ジェマ・イスラミア(JI)」がインドネシアを中心にテロ活動をしていたが、その後メンバーが分裂したり、逮捕されるなどして現在JIそのものは目立った活動をしていない。

治安当局による摘発や厳戒態勢でテロの未然防止や封じ込めがある程度功を奏しているといわれるが、その一方でメンバーの活動やリクルートが潜伏化し、テロの対象も一般市民が集まるソフトターゲットから治安関連施設や警察官を標的にするなど変質しているとの見方が有力だ。

日本大使館が在留邦人に注意呼びかけも

こうしたインドネシアの断食期間の厳戒態勢についてジャカルタの日本大使館も4月30日に在留邦人向けの注意情報を配信し、その中で「断食期間中のテロへの注意」を呼びかけている。

その中では「ラマダン(断食)期間中はテロへの警戒を怠らないようにして下さい。この数年ラマダン期間中及びその前後にテロが発生しています」とした上で「現時点において具体的なテロ情報に接している訳ではありませんが、テロの標的となりやすい場所、警察署等治安関連施設、宗教関連施設寺院・教会、モールや市場」での注意と警戒を喚起している。

断食期間中、イスラム教徒は敬虔に過ごし、キリスト教徒や仏教徒も圧倒的多数のイスラム教徒への配慮から、公の場所での飲食を慎んだり、盛り場の営業を自粛したりすることなどが求められており、インドネシアは静かな中に緊張感が漂う断食月を送っている。


[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

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