韓国の未婚の母が子を育てられない厳しい事情

2018年6月27日(水)18時30分
佐々木和義

血統を重視する韓国社会

また、生まれたばかりの子を養子に出す母親にも出生届が義務付けられた。特例法にもとづく養子縁組の出生記録は厳密に管理されるため公になることはないが、個人情報の漏えいを不安に感じる未婚の母は少なくない。熟慮期間として設けられた出産後の7日間に出産の事実が周りに知れることを危惧する未婚の母もいるという。

韓国社会は血統と体面を重視する。未婚で出産した娘を勘当する親や、採用に際して出生から成人まで念入りに調査する企業すらある。養親子であることを隠したい養親は許可を得るために裁判所に出向くことをためらう。ソウルや釜山などの大都市は裁判所の許可が下りるまで時間がかかるが、待機中の子どもを預かる施設は限られる。

法改正が乳児遺棄を助長?

さらに、出産を秘匿したい未婚の母にとって出生届は負担であり、待機する7日間を待てずに生まれたばかりの乳児を遺棄する事例も増えている。

ソウル市冠岳区の教会が管理する「ベビーボックス」に遺棄された乳児は、2011年は24人で、2012年は67人だったが、改正入養特例法施行後の2013年には224人、2014年は220人と一気に増加した。韓国内で遺棄される乳児は、保健福祉部が把握しているだけでも年間300人に及んでおり、子どもの権利擁護を目指した法改正が乳児遺棄を助長しているという声すらある。

少子高齢化が進むなか、胎児の命を断つ中絶に否定的な声もあるが、未婚の親が子育てできる社会的環境が整っていない現状から、中絶の容認を求める声が多くなっているのだ。

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