日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

2018年3月9日(金)18時00分
パウィン・チャチャワーンポンパン(京都大学東南アジア研究所准教授)

日本の産業界は数年前から、タイの政治環境に懸念を抱き始めており、タイ市場だけに依存せず、他の投資先を開拓する動きが始まっていた。例えばインドでは、ムンバイと西部のアーメダバードを結ぶ高速鉄道計画に新幹線方式の採用が決まっており、17年9月には起工式が行われた。

高速鉄道だけではない。日本は、ベトナムやミャンマー(ビルマ)などの東南アジアの新興国を対象に、小売り、ホテル、レストラン、建設などの分野でも投資を活発化させている。

タイの国民が高速鉄道の旅を楽しめるようになるのは、だいぶ先になりそうだ。軍事政権下で政治の問題がプロジェクトを長期にわたり停滞させており、この状況はまだ続く。日本がタイの高速鉄道計画から手を引くとすれば、それは理にかなった判断と言えるだろう。

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