日本の公務員は先進国で最も少なく、収入レベルは突出して高い

2016年10月5日(水)15時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

 しかし日本では、公務員は人気の職業だ。高度経済成長期には「安月給」などと忌避されたが、今はそうではない。学生の公務員志望率も高まっている。

 上記の『世界価値観調査』では、自分が属する世帯の収入の水準を尋ねている。10段階で自己評定してもらう形式で、日本の場合、公務員の平均点は4.89点、民間勤務者のそれは3.93点となる。前者は後者の1.24倍。

 この指標は民間に比した公務員の優位度と読めるが、先ほど明らかにした公務員比率と合わせて見ると、各国の公務員の地位が可視化できる。次の<図1>は、横軸に公務員比率、縦軸に公務員の収入の対民間倍率をとった座標上に58カ国を配置したグラフだ。

 ドットの配置は右下がりで、公務員が少ない社会ほどその優位度が高い傾向にある。

 左上にあるのは公務員の収入レベルが高い国で、日本はこのタイプだ。右下の旧共産圏の国々はその逆で、公務員は多いが収入は民間より低くなっている。

【参考記事】2050年の「超高齢化」日本に必要な意識改革

 日本は公務員が少ない社会だ。現在、これをさらに減らそうという動きが出ているが、それは果たして超高齢化社会に適した方針なのだろうか。生活保護の現場では、ケースワーカーの数が足りず、悲鳴が上がっていると言われている。

 <図1>の左上にさらに上げるのではなく、その反対の方向(右下)にシフトさせることが望まれる。それによって、官民間の格差から生じる軋轢を避け、福祉をはじめとした諸々の社会制度を充実させることにもつながるのではないだろうか。

<資料:『第6回世界価値観調査』(2010~14年)

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