日本軍と共謀した毛沢東を、中国人はどう受け止めたか?

2016年6月23日(木)16時35分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 いったいどのような反応が出るか、それが怖かったが、知りたいという気持ちが凌駕した。

肯定的コメントに驚く

 しかし、恐れていたことは起きなかった。

 すべて肯定的なコメントばかりなのだ。

 日本では読者のコメントに「毛沢東が日本軍と共謀などするはずなどない!」といったものが散見され、日本人がいかに洗脳されているかに驚いたが、中国語圏の世界では、「よくぞ言った!」という礼賛と肯定のコメントに満ち溢れている。

 もっとも主として華人華僑の世界なので、反共の人が多いだろうということも言えなくはないが、五毛党(中国政府のためにコメントを書き込む人たち)はどこからでもネットにアクセスできるし、アメリカにも潜り込んでいる。だから、彼らが激しい罵倒を始めるだろうと覚悟していたが、今のところ、それはない。

 VOAのコメントは、VOAのライブのページの下の方に書いてある。

 主としてどういうものがあるか、その趣旨を列挙してみよう。

●中国共産党は最初から「民主の詐欺師」だ。

●中国人はおおよそのことは知っている。しかし、これを系統的に調べて日本の内部資料に基づいて証拠を出したのは価値がある。

●中国には数えきれないほどの売国奴がいるが、毛沢東は歴代最大の売国奴だ。

●この真相を、中国大陸にいる全ての人民が知るべきだ。

●毛沢東は皇軍(日本軍)に感謝すると言ったが、それは本心だった。

 最後の「毛沢東は皇軍に感謝すると言った」ということに関するコメントが最も多く、おまけにコメントの文章がものすごく長い。それは怒りをほとばしらせているように、筆者には見えた。

 日本の読者の中には、「毛沢東が皇軍に感謝すると言ったのは、いわゆる逆説的なユーモアのようなもので、それをまともに受けて書いている遠藤は、ついにモウロクしたか?」という趣旨の読者コメントを書いている人が散見されたが、ここに中国人と日本人の分岐点があるように感ぜられる。いや、「日本人の精神性の限界」と言ってもいいだろうか。

 日本人は敗戦後、アメリカによって徹底的に洗脳され、「悪いのは、原爆を落としたアメリカではなく、あくまでも日本だ。悪いのは日本軍の蛮行であり、それを許した日本だ」ということを徹底的に叩きこまれた。それによってアメリカの占領統治を容易にする精神性を日本人に植え付けた。

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