バイデンは「親中」ではないが「親日」でもない──日本が覚悟するべきこと

2020年11月16日(月)19時05分
六辻彰二

ただし、その場合、バイデンが日本に大きな「アメ」をくれるとは思えない。安倍前首相のもと日本政府はトランプ政権と総じて良好な関係を保ったからだ。

言いがかりのようなイラン制裁でも、ヨーロッパの多くの国が批判したのと対照的に日本政府は異論を唱えることなく、これにつきあった。こうした積み重ねにより、日本はトランプ政権とギクシャクした度合いが最も小さかった国の一つになった(それが自慢になるかは話が別だが)。

だとすると、バイデンの目からみて日本にことさら大きな「アメ」を与える必要はないだろう。少なくとも、トランプとこれみよがしにつきあい、特に関係が悪化しなかった日本政府を、アメリカの側に引き戻すために特別扱いしなければならない理由はバイデンにはない。

こうして考えると、香港問題に関する中国包囲網への参加を日本に求める場合、バイデンはむしろ「ムチ」で臨む公算すらある。

例えば、バイデンは「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に戻るつもりはない」と明言する一方、TPPに代わる多国間の自由貿易協定を提案している。すでにあるTPPを取り入れた新たな枠組みを作る場合、再交渉の過程で日本が抵抗してきた農産物貿易が再度浮上することもあり得る。

トランプという台風が通り過ぎても、日本にとって難しい選択を迫られる状況に大きな変化はないといえるだろう。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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