【ラグビーW杯】オールブラックスの「ハカ」を封じ込めたエディー・ジョーンズの魔術

2019年10月28日(月)14時00分
木村正人

準決勝でイングランドが勝つと思っている人はという逆質問に困惑する報道陣に対してこう言った。「イングランドは大きな負け犬であることが裏付けられた。我々には失うものは何もない。一方、ニュージーランドはどこまでもプレッシャーが追いかけてくる。今週、相手チームで最も忙しくなるのはメンタルスキルコーチだろう」

見出しができたメディアはチーム内の不協和音や故障、問題点などイングランドの粗探しをする必要はなくなった。

前日本代表HCのジョーンズ氏はオールブラックスが日本のラグビーファンにとって2番目に大好きなチームであることを熟知している。「ブレイブ・ブロッサムズ」がスコットランドを撃破して初のベスト8入りを実現しようとしている時でさえ試合会場の店ではオールブラックスの関連グッズが販売されていた。

サムライ文化を心に宿す日本には、戦いの舞いである「ハカ」の神秘性に共感を覚える人が多いのだ。準決勝で試合会場がオールブラックスの「オーラ」に呑み込まれた時、イングランドは観客席のサムライサポーターも敵に回すことになる。こうしたジョーンズ氏の懸念が「ハカ」への対抗策につながったのは確実だ。

ジョーンズ氏はゲームだけでなく、すべてのディテールにこだわる。決勝のスプリングボクス(南アフリカ)戦に向けて、どんな心理戦を繰り出してくるのかも見逃せない。

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