中国大陸ネットに「日本軍と共謀した毛沢東」の独自評論出現

2016年10月20日(木)06時30分
遠藤誉

 先日、中国大陸のネット空間に「日本軍と共謀した毛沢東と中共スパイ」に関する記事があるのを知った。筆者とは全く関係なく行なわれた分析だ。教えてくれたのは、なんと中国政府高官である。何が起きているのか?

口封じのために投獄された(中共スパイ)潘漢年

 その評論記事は「北京山東同郷沙龍(sha-long)(サロン)」に公開されていた。

 これは、「北京に在住する山東省出身の人たちの同郷誌」といった感じのウェブサイトである。このページの少し下の方に「2016/10/16」という日付の記事があり、その三番目に「潘漢年入獄塵封毛沢東於汪精衛来往秘史」という文字の簡体字によるタイトルがある。汪精衛というのは、日中戦争時に南京にあった日本の傀儡政権と言われている汪兆銘政権の「汪兆銘」のことである。

 潘漢年というのは、毛沢東が日本軍と共謀するために上海に派遣した中共スパイの一人で、日本の外務省系列の岩井公館に潜り込んだ男だ。岩井公館の創設者であった岩井英一に近づき、スパイ活動を行なった。

 この記事のタイトルの意味は「潘漢年が投獄されたのは、毛沢東と汪兆銘の交流に関する秘史を封じ込めるためだ」という感じである。

 ここに書いてある中で、ひとつだけ間違いがある。

 それは「潘漢年は女性スパイ関露を岩井英一に紹介し、岩井と寝ることによってスパイ活動を行なった」という趣旨の描写である。

 岩井は、そのようなことはしていない。関露は岩井とは関係なく、汪兆銘政権のスパイ機関「76号」に潜り込んだだけである。この詳細は拙著『毛沢東  日本軍と共謀した男』で詳述した。

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