楠田が後年献身したのはグローバルな知的交流を支える国際交流基金日米センターのプロジェクトであった。志と活動を共にした著者は、組織の精神をよりよく表す英語名、CGP(センター・フォー・グローバルパートナーシップ)を用いる。
日米親善は日米のためだけではない。福田首相は「世界のための日米の役割」を説き、安倍は首相間近で病に倒れるも、安倍基金というより良き世界のための日米協働のイニシアチブを遺した。
直近の約30年、私達日本国民は自身の安全の問題に振り回され、百年の大計であったグローバルパートナーシップの意義をあまり説かなくなったのではないか。それは「民」の力の意義も含めて当たり前になったからだろうか。
楠田は55年体制の崩壊につながる1993年の総選挙結果を見て「変化するものは正しい。変化しないものは美しい」と書いた(509頁)。私達はいかなる知的土台に立って、何を変え、何を守るのだろうか。
村井良太(Ryota Murai)
駒澤大学法学部教授。博士(政治学)。1972年香川県生まれ。2002年神戸大学大学院法学研究科博士後期課程修了。2013年より現職。専攻・日本政治外交史。主な業績に『政党内閣制の成立 一九一八~二七年』(有斐閣、2005年、サントリー学芸賞)、『佐藤栄作』(中央公論新社、2019年、日本防衛学会猪木正道賞特別賞)、『市川房枝』(ミネルヴァ書房、2021年)、『「憲政常道」の近代日本』(NHKブックス、2025年)など。
『匿名への情熱──政治と知的世界をつないだブレーン楠田實』
和田純[著]
吉田書店[刊]
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※本書は2017年度、2018年度サントリー文化財団「人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成」の成果書籍です。
『佐藤栄作──戦後日本の政治指導者』
村井良太[著]
中公新書[刊]
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