「令和の米騒動」の背景にある「農政トライアングル」とは何か？...自民党・農協・農林省の結節点

なお、海外に拠点を持つ研究者も近年の日本農政の変化に着目しており、Jentzsch（2021）やMaclachlan & Shimizu（2022）など、制度的変化や地域レベルの農業者組織などを分析する研究書も出版されている（＊）。

佐々田による本書は日本語で執筆されているが、著者は英語での研究業績も多く、これまで日本語で発表された書籍も英訳されている。本書の理論・実証も国際的な対話の可能性が念頭に置かれており、その観点からも重要な研究である。

現代の政策課題を歴史的・構造的なアプローチからとらえ直していく本書は、農政をめぐる議論にとどまらず、政策過程に関心のあるすべての読者にとっての参考書となるだろう。

［注］
（＊）Jentzsch, Hanno, 2021, Harvesting State Support: Institutional Change and Local Agency in Japanese Agriculture, Toronto: University of Toronto Press.
Maclachlan, Patricia L. and Kay Shimizu, 2022, Betting on the Farm: Institutional Change in Japanese Agriculture, Ithaca: Cornell University Press.

川口航史（Hirofumi Kawaguchi）
慶應義塾大学総合政策学部准教授。専門は政治過程論、日本政治。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士（法学）。東京大学特任研究員、日本学術振興会特別研究員（PD）、琉球大学人文社会学部准教授などを経て現職。主要業績に『戦後日本農政と農業者──組織・動員・忠誠』（吉田書店、2025年）、 "Geographic Divides in Protectionism: The Social Context Approach with Evidence from Japan"（共著、Review of International Political Economy, 31巻2号、2024年）など。「戦後日本農政の構造と変容：農業協同組合を中心として」にて、サントリー文化財団2016年度「若手研究者のためのチャレンジ研究助成」に採択。

　『農政トライアングルの誕生──自己組織化する利益誘導構造 1945-1980』

　佐々田博教［著］
　千倉書房［刊］

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　『戦後日本農政と農業者──組織・動員・忠誠』

　川口航史［著］
　吉田書店［刊］

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