名馬だらけのテーマパークを造った新疆ウイグル自治区の逸材企業家
国際的なリゾート地を目指す海南島では実際にカジノ設備を作ってしまったホテルもあるが、いまだに認可が下りないままだ。競馬についても、「ついに解禁」との噂が流れては立ち消えになるということが何度も繰り返されてきた。
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陳氏は新疆限定での競馬解禁を求めて自治区の高官とともに北京市で陳情して回ったというが、いまだに解禁のめどは立っていない。彼ほどの大物企業家であっても、中央政府を動かすことは難しい。
もっとも、陳氏は焦ってはいないようだ。起業して20年あまり、中国政府とも中央アジアの政府とも我慢強くつきあい、さまざまな規制や困難を乗り越えてきたという自信があるからだろう。
私と陳氏は初めての対面だったが、またたく間に意気投合し、夜遅くまで痛飲した。中国語には「黒白両道」という言葉がある。白道(表の世界)にも黒社会(裏の世界)にも通じた人物を意味するものだ。
新疆ウイグル自治区での貿易事業を進めるために、陳氏が公言できないようなことも体験してきたことは間違いない。そして私も、歌舞伎町で生き抜く中でさまざまな闇を目にしてきた。黒と白の世界の狭間に生きる者同士、通じ合うものがあった。
そんな私だからこそ気づけたのだろう。自らのビジネス、新疆の馬産業の未来を熱く語る陳氏の目になにやら悲しみのようなものが宿っていることに。
陳氏はまぎれもなく成功者だ。中国の規制を逆手にとり、巨万の資産を築いてきた。もし中国が、新疆ウイグル自治区が自由な世界だったならば、陳氏以外の人物も数多くビジネスで成功していたかもしれない。無数のライバルを相手にこれほどの成功を収めることは難しかったかもしれない。
ある意味で、陳氏のような凄腕の企業家にとって政府の規制は成功の源泉なのだ。だがそれでも自らの力だけで自由にビジネスができないこと、強大な権力に従うしかない状況に悲しみを抱いているのではないか。
酒を酌み交わすうちに彼の内心を理解した私だったが、その思いをあえて口に出すことはなかった。
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