コラム

中国建国70周年の祝賀パレードに登場した、チベット活仏を「俗人化」させた娘

2019年10月17日(木)17時30分

それでも彼は共産党が破壊した寺院を再建し、後進の育成に当たるなど仏教の復活に尽力した。1989年1月、共産党が破壊した歴世パンチェン・ラマの仏塔を再建しようとチベット西部のタシルンポ寺を訪れたときに急逝した。激務による疲労説と、式典中に共産党を批判したために暗殺されたという説がある。

中国政府はそれ以降、ダライ・ラマを「宗教の袈裟(けさ)をかぶったオオカミ」だと批判する一方、パンチェン・ラマを「祖国を愛した人士」と称賛してきた。この「愛国人士」が仏教の戒律を破って生まれた女性が、「中華民族の一員」として山車に乗って習近平(シー・チンピン)国家主席の前を行進したのである。

10世が亡くなった後の1995年5月、ダライ・ラマはインドからチベットに住む6歳の少年をその転生として認定した。しかし、共産党は直ちに少年を拉致し、別の傀儡をパンチェン・ラマ11世に擁立した。現在、この人気のない11世が共産党のためにチベット人に対して「愛国」を呼び掛ける看板となっている。

世界の亡命チベット人が集まった特別会議が10月初め、インド北部ダラムサラで開かれ、ダライ・ラマ継承の在り方はダライ・ラマ本人が決めると決議した。パンチェン・ラマ10世をめぐり繰り返された共産党の介入を今度こそ拒絶するためだ。

<本誌2019年10月22日号掲載>

【参考記事】亡命生活60年となったダライ・ラマ 気がかりな継承者問題と中国「次の一手」
【参考記事】焼身しか策がないチベット人の悲劇

20191022issue_cover200.jpg
※10月22日号(10月16日発売)は、「AI vs. 癌」特集。ゲノム解析+人工知能が「人類の天敵」である癌を克服する日は近い。プレシジョン・メディシン(精密医療)の導入は今、どこまで進んでいるか。

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

NYでジェット機衝突、トランプ氏は主要空港にICE

ワールド

トランプ米政権、将来の指導者としてイラン国会議長に

ワールド

米政権がハーバード大を新たに調査、学生の「差別」巡

ワールド

米・イラン協議、双方の主張に矛盾 「合意目前」「協
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 2
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」した──イスラエル首相
  • 3
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に困る」黒レースのドレス...豊胸を疑う声も
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 6
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 7
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 8
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    イラン戦争の陰で悪化する「もう1つの戦争」とは?
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 6
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 7
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 10
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story