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中東

世界経済に走る大激震

Economic Blowback

2026年3月11日(水)06時00分
エスファンディヤール・バトマンゲリジ (シンクタンク「ボース&バザーファウンデーション」創設者)
UAE東部フジャイラの石油貯蔵施設がある産業地区で火災が発生(4日) AMR ALFIKYーREUTERS

UAE東部フジャイラの石油貯蔵施設がある産業地区で火災が発生(4日) AMR ALFIKYーREUTERS

<「金持ちの産油国」から世界的な経済大国へと脱皮を図ってきたがイランの攻撃で大ピンチに>


▼目次
ロシアがシェアを奪う?
国際資本の流れを遮断

アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにあるアマゾンウェブサービス(AWS)の施設で火災が発生し、クラウドサービスが一時停止したのは3月1日のこと。どうやらイランの無人機(ドローン)がUAEの防空システムに迎撃され、破片がアマゾンのデータセンターを直撃したらしい。

ドローンの攻撃でクラウドサービスが停止──。それは、現在中東で起きている戦争が、いかに新しい性格のものかを物語る出来事だった。世界経済のハブとなる都市や施設に直接ダメージを与える戦争は、第2次大戦以来だ。

アメリカとイスラエルは、2月28日にイランに対する軍事作戦を開始したとき、イランから強力な反撃があることは予想していた。ところがイランは、米軍とイスラエル軍に反撃するだけでなく、湾岸協力会議(GCC)の加盟国の民間施設も攻撃した。

GCCはペルシャ湾岸に面する全ての国が参加する地域協力機構で、地域安全保障を担う側面を持つ。メンバーはサウジアラビア、カタール、UAE、バーレーン、クウェート、オマーンの6カ国だ。

オイルマネーで潤うこれらの国は、ドナルド・トランプ米大統領の就任以来、最も巧みな外交活動を展開してきた国でもある。その指導者たちはトランプ政権に独自の影響力を持ち、イランと戦争をするよりも、核合意を再建するよう促してきた。

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PETER HERMES FURIAN/SHUTTERSTOCK

それなのに、イランのドローンや弾道ミサイルはこれらの国の石油プラットフォームや製油所、空港、港湾、ホテル、そして商船を攻撃した。各国政府が厳しい非難の声を上げたのも当然だろう。

UAEのアンワル・ガルガーシュ大統領外交顧問は、湾岸諸国を攻撃すれば、「イランは中東最大の危険の源泉であり、そのミサイル開発計画は中東を常に不安定化するという主張」が正しいと言うようなものだと警告する。そして、危機が深刻化する前に「理性」を取り戻すよう、イランに呼びかけた。

イランの反応は、湾岸諸国をこの戦争に巻き込み、米軍に領空の通過を認めたり、対イラン攻撃に協力したりする事態をもたらしかねない。ただ、現時点では各国首脳は経済への影響の拡大を懸念し、トランプ政権に停戦を促しているようだ。

湾岸諸国はこの四半世紀で、単なる産油国から世界的な経済大国へと成長してきた。それが可能になった理由の1つは、アメリカが保証する安定と安全だ。実際、オマーンを除くGCCの加盟国全てに米軍基地がある。

ところが今回、イランのドローンに防空システムを破られたことで、湾岸諸国の安全なイメージは吹き飛んだ。不安に駆られた住民や観光客を安心させようと、UAEのムハンマド・ビン・ザイド・アル・ナハヤン大統領が3月2日、ドバイ・モールを散策してみせたが、世界の投資家の不安はまだ払拭できていない。

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国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

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