「最低賃金では暮らせない」...日本企業に広がる「生活賃金」とは?
総裁選でも論戦、実効性は未知数
賃上げは政府内でも政策の最優先課題と位置づけられ、石破政権で経済再生担当相を務めてきた赤沢亮正氏は1日、都内での講演で「いまの最低賃金だと、フルタイムで働いても暮らしていくことは極めて困難」との認識を示した。生活賃金には触れなかったが、最賃自体の引き上げの重要性を説いた。
賃金を巡っては、4日投開票の自民党総裁選でも重要なテーマとなった。小泉進次郎氏が2030年度までに平均賃金100万円増を目指すとし、林芳正氏は1%程度の実質賃金上昇の定着を掲げた。高市早苗氏はコスト高から中小企業を守り、賃上げを可能にする環境整備をするとした。ただ、従来の発想の延長線上にとどまるとの見方もあり、新総裁の下でどこまで実効性のある対応策がとられるかは見通せない。
味の素やファストリも、ESG投資を意識
こうした中、味の素や森永製菓、ファーストリテイリングなどの大手企業が相次ぎ生活賃金について言及している。大和総研の中澪研究員は「人手不足感が強まる中、待遇改善によって採用競争力を高める狙いがある」と説明した上で、「人権施策の一環として取り組んでいる企業が多い」と話す。近年、欧米では、ESG(環境・社会・企業統治)の観点から、企業に生活賃金の支払いを求める株主提案が出されているためだ。
例えば、英資産運用会社のリーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)は昨年、小売大手ウォルマートの株主総会に、生活賃金制度の策定を求める案を提出した。ウォルマートは23年に店舗従業員の最低時給を14ドルに引き上げていたが、LGIM側は生活賃金を時給約25ドルと計算。「生活賃金を保障しない賃金制度は経済全体に有害であり、ひいては株主の利益にも悪影響を及ぼす」と主張した。
同案は総会で否決されたが、人材の確保・定着が改善されれば、企業の業績向上につながるため、日本でも同様の株主提案が出てくる可能性がありそうだ。
(小川悠介 編集:橋本浩)
アマゾンに飛びます
2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら





