最新記事
中国

中国の自律型殺人ロボット、戦場に登場間近...AI戦争の新時代到来

China's Killer Robots Are Coming

2024年7月8日(月)11時10分
ヒュー・キャメロン
(写真はイメージです) Rock'n Roll Monkey-Unsplash

(写真はイメージです) Rock'n Roll Monkey-Unsplash

<中国軍が開発する自律型殺人ロボットが2年以内に実戦配備される可能性が高まり、AI兵器の脅威が現実化している>

中国の自律型「殺人ロボット」が2年以内に戦場で中国軍に配備されようとしている。来るべきAI戦争の新時代を、ある専門家は「人類の生存にとって最大の危険」と位置付ける。

【画像】2年以内に戦場へ登場...中国のAI殺人ロボット

劇場化する今世紀の戦争の中で、ドローンやサイバー攻撃などの遠隔操作戦争は、ますます中心的な役割を果たすようになった。無人航空機による空の制圧は、ウクライナで続く戦争で重大な問題になっており、アメリカ国防総省はこのほど、新たに10億ドルを拠出してドローン部隊をアップグレードすると発表した。

さらに一歩先を行き、兵士に代わって戦場に配備するAI駆動の完全自律型「殺人ロボット」の開発に乗り出した国もある。

「2年以内に自律マシンが中国から登場しなければ驚きだ」。防衛アナリストのフランシス・トゥーサはナショナル・セキュリティ・ニュースにそう語り、中国はAIを使った最新鋭の船舶や潜水艦、航空機を「目が回るほどのペースで」開発していると指摘。「アメリカより4~5倍速く動いている」と言い添えた。

報道によると、中国とロシアは既にAI兵器の開発で協力関係にある。

中国人民解放軍は5月にカンボジアで行った軍事演習で、銃を装填したロボット犬を披露した。製造したのは中国企業の宇樹科技。ロシアは同社のロボット犬を改造して「M-81」と名称を変え、ロケット弾発射装置を搭載して、2022年にモスクワで開かれた兵器見本市で展示した。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、自律兵器の使用を制限する国際法の枠組みの新設を求め、「ストップ殺人ロボット」キャンペーンを共同創設している。

HRWのアームズキャンペーンディレクター、スティーブ・グースは本誌にこう語った。「残念ながら中国は、他の軍事大国と同様に、殺人ロボットの獲得に向け突き進んでいるようだ。中国は殺人ロボットについて、外交の場では自律兵器の自制を呼びかけているが、その発言は行動に反映されていない」

中国は既にAIマシンを兵器の開発に使い始めており、これで爆弾や砲弾の生産量は2028年までに3倍に増える可能性があるとの見方もある。

西側ではそうしたシステムの開発は、法的・倫理的反対によって、さらには軍事拠出を阻む民主的な防波堤によって遅れるだろうとトゥーサは見る。だがグースはそれほど楽観的ではない。

「殺人ロボットに関するアメリカの政策は、そうした兵器の倫理的側面にほとんど関心を示していない。自律兵器に対して新たに国際的な禁止措置や制限措置を講じることには反対し、自主的な行動規範のみを求めながら、戦場への配備を急いでいる」(グース)

2023年3月、自律殺傷兵器システムに関する国連会議でアメリカ代表は、そうした兵器の開発に対する法整備の着手について、今は「適切な時ではない」と発言した。

こうした抑制の効かない進展に対し、非人間の兵器は戦争法を守れず、国家が兵士の犠牲を恐れて戦争を躊躇することもなくなると危惧する声が巻き起こっている。

そうした兵器の使用を規制する役割を担う超国家機関はロシア、中国、アメリカ(殺人ロボットでを積極推進する国家)の独占状態にあることから、規制しようとしても「実質的にほとんど何も生まれない」とグースは言う。

このまま放置すれば、自律兵器は核兵器や気候変動とともに、「人類の生存に対して最大の危険を投げかける」とグースは警鐘を鳴らしている。

(翻訳:鈴木聖子)

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中