最新記事
ロシア大統領選

ロシア大統領選での圧勝はなぜプーチン凋落の始まりか

Putin's Plans for Russia Over Next Six Years

2024年3月18日(月)17時21分
ブレンダン・コール

プーチンは2月の演説や国営通信社RIAノーボスチが13日に配信したインタビューで、西側諸国に対し強硬な発言を繰り返した。インタビューでは、ロシアは核兵器を使用する準備が整っていると述べるとともに、米大統領選を酷評した。米大統領選でドナルド・トランプが返り咲けば、ロシア政府とトランプの関係を巡る疑惑が再燃する可能性もある。

 

「最大にして最重要の不確定要素は、2024年米大統領選で何が起きるかだ」と語るのは、コロラド鉱山大学のケン・オズゴッド教授(歴史学)だ。トランプと共和党内のトランプ支持派がウクライナでの戦争を早期に終わらせる意向を示しているからだ。

「アメリカからウクライナへの支援を手控えると圧力をかけて交渉に持ち込めば、ウクライナは領土を回復できずプーチンの勝利になるだろう。すでにロシアの占領下にある地域以外の領土が手に入らなかったろしても、プーチンは勝利を宣言するだろう」とオズゴッドは本誌に語った。「そうした交渉の影響は長い間尾を引くだろう」

ねらいはNATOの分裂

では、ウクライナ戦争での勝利はプーチンがポーランドに侵攻したり、NATOと戦争を始めたりすることを意味するのか。

「いや、その可能性はそれほど高くないだろう。たとえアメリカがNATOから手を引いたとしても、NATOは依然として核武装をした強大な軍事同盟であり、大規模な反応を引き起こすような直接攻撃は無謀だ」と、オズコットは言う。

だがプーチンは、NATOの分裂を誘発するために、攻撃的なサイバー戦や情報戦を開始する可能性が高い、と彼は言う。「プーチンは、ハンガリーのビクトル・オルバン首相やドナルド・トランプなど、ロシアに友好的な政治家の勢力を強化しようとするだろう」

英王立国際問題研究所のロシア・ユーラシアプログラムのアソシエイトフェロー、ジョン・ロウは、プーチン政権があと6年も続けば、ロシアは「次第に見通しの暗い状態」になると述べる。

「多くのロシア人から見れば、プーチンは国民から未来を奪った存在だ。おそらく今から5~10年の間に、彼が掘り、ロシアが落ちた穴が、より明らかになるだろう」とロウは言う。

深まるロシアの孤立

アメリカがヨーロッパから遠ざかり、NATOの機能が低下するとしたら、「それはプーチンにとって自分の努力の成果であることは間違いないだろう。だがそれによってロシアはますます孤立し、ますます魅力のない国になっていく」、とロウは指摘した。

ジョー・バイデン大統領はロシアがウクライナの後に他の国々への侵攻を視野に入れていると主張し、プーチンはそれを「全くのナンセンス」と否定した。だが戦争が終わったときに、ロシアの指導者としてプーチンは国民に何を勝利として示そうとするのだろうか。

「プーチンは、コストがあまりにも高くつくことから、ウクライナ全土を奪おうとは考えていない」と言うのは、米国防総省の政策顧問を務める元外交官ミエテク・ボドゥシンスキだ。

「むしろロシアが現在支配しているウクライナの国土の一部を、ロシアの飛び地として維持しようとするだろう。そうすることで、ウクライナを分裂させ、弱体化し、NATOやEUに加盟しにくくすることを狙っている」

「プーチンがNATOと本格的に通常戦争を始めることを望んでいるとは思わない。だが同盟にくさびを打ち込み、偽情報やサイバー攻撃のような手段を使って、NATO諸国に代替戦争を仕掛ける方法を求め続けていくだろう」とボドゥシンスキは、付け加えた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米消費者信用リスク、Z世代中心に悪化 学生ローンが

ビジネス

米財務長官「ブラード氏と良い話し合い」、次期FRB

ワールド

米・カタール、防衛協力強化協定とりまとめ近い ルビ

ビジネス

TikTok巡り19日の首脳会談で最終合意=米財務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中