最新記事
外交

米国務長官を「格下あつかい」...異様なまでの「外交非礼」を見せた習近平に、アメリカが低姿勢を貫く理由

A FROSTY RECEPTION

2023年6月28日(水)19時26分
ロビー・グラマー、クリスティーナ・ルー(いずれもフォーリン・ポリシー誌記者)
ブリンケン国務長官と習近平国家主席

習はブリンケンを2列の長テーブルの端に座らせ、自分は座長席に収まった LEAH MILLISーPOOLーREUTERS

<ブリンケン米国務長官を露骨に冷遇した中国。それでも米バイデン政権には、訪中によって得たものがあった>

アントニー・ブリンケン米国務長官は6月18日、飛行機のタラップを降りて中国の大地を踏んだ。バイデン政権の閣僚としては初の中国訪問である。だが、そこに待ち受けていたのは何とも寂しい光景だった。北京国際空港でブリンケンを出迎えたのは少数の役人、それにニコラス・バーンズ駐中国米大使だけだ。この寒々とした出迎え風景がその後に続く2つの超大国間の一連の協議のトーンを決めることになった。

■【動画】レッドカーペットも高官の出迎えもなし、哀れなブリンケン米国務長官と仏マクロン大統領との差

ブリンケンは2日間の慌ただしい日程をこなした。中国の秦剛(チン・カン)外相との何時間にも及ぶ密室協議、今も中国の外交政策を統括する王毅(ワン・イー)前外相との会談、加えて中国の習近平(シー・チンピン)国家主席との短時間の面会(習は席の並び方で露骨にブリンケンを「格下」扱いした)。だが中国側の異様なまでに礼を失した対応が示すように、ブリンケン訪中は米中歩み寄りの一歩とは言い難いものだった。

バイデン政権のこれまでの対中政策を見れば、それも驚くには当たらない。何しろ台湾への軍事その他の支援を拡大しつつ、アジア太平洋地域で対中包囲網とも言うべき安全保障の枠組み構築を目指し、輸出入規制や制裁で経済面でも中国への締め付けを強化してきたのだ。

対中圧力をこの上なく高めつつ、緊張緩和を目指すバイデン政権の外交戦略は明らかに矛盾している。その矛盾が物語るのはジョー・バイデン米大統領のジレンマだ。米政界の対中強硬派は今やエンジン全開で中国脅威論を唱えている。彼らの存在を無視するわけにはいかないが、かといって強硬路線一辺倒で進むのは危険極まりない。気候変動対策では米中が協力する必要もあるし、米中競争のとばっちりを受けないよう米企業を守る必要もある。バイデンが米中間の「責任ある競争管理」を掲げたのはまさにそのためだ。だが中国はそんなバイデン節を鼻で笑う。

ブリンケンの訪中は緊張緩和に向けた重要な一歩

それでもバイデンの対中政策を支持する有力議員らは、ブリンケンの訪中を緊張緩和に向けた重要な一歩と評価する。東アジアの同盟国は米中の新冷戦が「熱い戦争」に発展する事態を何より恐れているが、今回の訪中はそうした懸念を和らげる効果もあったというのだ。

「関係の安定化には対話が不可欠だが、全体として(今回の訪中は)対話再開に向けた有望な一歩となった」と語るのは米下院に新設された「中国共産党との戦略的競争に関する特別委員会」で民主党を率いるラジャ・クリシュナムルティだ。「紛争と侵攻を抑止する備えを固めた上で、(緊張緩和を)目指せばいい」

座談会
「アフリカでビジネスをする」の理想と現実...国際協力銀行(JBIC)若手職員が語る体験談
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪経済見通し、現時点でバランス取れている=中銀総裁

ワールド

原油先物横ばい、前日の上昇維持 ロシア製油所攻撃受

ワールド

クックFRB理事の解任認めず、米控訴裁が地裁判断支

ワールド

スウェーデン防衛費、対GDP比2.8%に拡大へ 2
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中