最新記事

ミャンマー

プーチン政権下のロシアに酷似? ミャンマー、メディア統制強化で進む虚偽報道

2022年10月29日(土)21時36分
大塚智彦
流血の跡が残る僧院学校の床

9月16日に国軍が空爆した僧院学校 Myanmar Now News / YouTube

<国外への侵攻とクーデターの違いはあるが、独裁者のとる行動は同じだ>

9月16日にミャンマー国軍が北西部サガイン地方域にある僧院学校を空爆し、児童や生徒、教師ら13人が死亡した事件で、国軍側が生き残った生徒に軍の攻撃を正当化する声明を読み上げさせ動画撮影するという「偽のプロパガンダ」を行ったことが地元メディアによって明らかになった。

反軍政の立場から報道を続けている地元メディア「ミャンマー・ナウ」は10月28日、サガイン地方域タバイン郡区レティ・エット・コーン村にある仏教系僧院学校を軍のMi35ヘリコプター2機が空爆した攻撃で生き残った15歳の生徒2人が軍の攻撃は正当なものだったとする内容の声明を読みあげることを「強要」されたと報じた。

「ミャンマー・ナウ」は生徒が読むことを強いられた軍政の手になる「声明文」のコピーを入手し、それを記事に添付している。

軍の攻撃を正当化する声明

生徒が読み上げることを強要された軍政の声明は「村が(反軍政の民主派組織である)国民統一政府(NUG)の武装市民組織である国民防衛軍(PDF)のメンバーによって占拠されていたため、掃討作戦の目的で村に派遣された兵士が修道院と診療所を乗っ取っていたPDFメンバーと衝突、戦闘になった」と空爆には一切言及することなく攻撃を正当化する内容となっている。

そのうえで「軍は戦闘に巻き込まれて負傷した民間人に付き添って治療を施し、重傷を負った人々をヘリコプターで医療機関に空輸した」と主張し、負傷者には人道的な措置を講じたこと強調している。

NUGのネイ・オネ・ラット報道官は「ミャンマー・ナウ」に対して23日に解放された生徒2人は「解放前に紙に書かれた文章で空爆時に何が起きたかの虚偽の内容を読み上げるよう強いられ、軍はその様子を動画撮影した」と非難してこの声明が虚偽で軍のプロパガンダに過ぎないとの見解を示した。

メディア統制強化で進む虚偽報道

ミャンマーでは軍政がメディアを完全に統制しており、国民には国営テレビ、国営紙、国営ネットなど全てが軍によるコントロール下にあり、報道は厳しく検閲されている。

しかし軍のネット規制の網を潜り抜けた独立系メディアが複数存在して、反軍政の立場から各地における軍とPDFや少数民族武装勢力との戦闘の状況、さらに民間人への兵士による暴力、レイプ、殺害などの深刻な人権侵害を精力的に報道し続けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英アングロ、BHPの買収提案拒否 「事業価値を過小

ビジネス

為替、基調的物価に無視できない影響なら政策の判断材

ビジネス

仏レミー・コアントロー、1─3月売上高が予想上回る

ビジネス

ドルは156.56円までさらに上昇、日銀総裁会見中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中