最新記事

インタビュー

デーブ・スペクター「日本は不思議なことに、オウンゴールで五輪に失敗した」

GAMES LOST BY "OWN GOALS"

2021年6月9日(水)18時30分
小暮聡子(本誌記者)
デーブ・スペクター

都内で取材に応じるデーブ・スペクター(5月28日、スペクター・コミュニケーションズ社)HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

<東京五輪が日本のイメージを悪化させている?「日本の素晴らしい貢献」「テレビ局の五輪事情」......日本が招いたフシギな状況をデーブ・スペクターが独占インタビューでめった斬り>

――東京で五輪を開催することをどう見ている?

日本は不思議なことに、オウンゴールで失敗した。つまり、運営側の問題で自滅した。まず東京オリンピックに対する世間の見方は、コロナ禍が深刻化する前に既にしらけていた。膨大なコストは約束よりも膨れ上がっているし、暑過ぎてマラソンは札幌でやるという。

コロナ前にもう日本は観光大国になっていたから、オリンピックは観光誘致のためでもないし、福島のためというのはもちろん誰にも通用しない。結局、何のために日本でやるの? オリンピックはもうソチ向け、と。

そういうなかでコロナ禍になって、オウンゴールを連発した。組織委員会の森(喜朗)前会長の女性蔑視発言とか、開会式での渡辺直美のブタ演出案とか、何をやっても細かい失敗ばかりで、日本の運営サイドが自分たちでオリンピックをしらけさせている。本来はシティー(開催都市)が行うはずが、いつのまにか自民党に乗っ取られている。

東京オリンピックじゃなくて、永田町オリンピック。サッカーの試合ならもう負けてますよ。運営側に問題があり過ぎて、応援したくないもん。始まる前から、見ていて楽しくない。

――デーブさんは昨年の本誌のインタビューで、日本はオリンピックを美化し過ぎだと指摘していたが、その日本でさえも冷めてしまった。

【関連記事】デーブ・スペクター「日本がオリンピックを美化するのはテレビのせい」

日本が世界に素晴らしい貢献をしていることがあって、それはIOC(国際オリンピック委員会)の問題点を世界にさらしたこと。IOCと付き合ってもいいことはないというのを国内だけでなく世界に対して浮き彫りにしてくれた。

これまでにもIOCのスキャンダルは報じられてきたが、ホスト国がここまで被害を受ける様子を見せたのは初めてだ。そもそもオリンピック開催はコストパフォーマンスが悪過ぎることもあって最近はホスト国への立候補が少なくなっているなかで、結果的に日本が大変貴重な貢献をした。

――それでも、五輪が始まればテレビはいつものように盛り上げる?

盛り上げないといけないから面倒くさいですよ。今日もテレビ局でみんなと話したのだが、毎日、五輪開催について批判的な声を報じているのに、始まったら急に万歳しないといけなくなる、どうするんだよ、と。

東京五輪のスポンサーである朝日新聞が中止にすべきと社説で書いたが、テレビ局自体が中止と言ったところはどこもない。テレビで五輪に批判的なコメントをしているのは社員以外の人たちだ。

でも、内心では中止にすべきと思っている人もいるかもしれない。中止に手を挙げればイメージアップになるから。今は誰も知らないような芸人が聖火ランナーを辞退します、と手を挙げただけで名前を売れる(笑)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

リーブス英財務相、広範な増税示唆 緊縮財政は回避へ

ワールド

プーチン氏、レアアース採掘計画と中朝国境の物流施設

ビジネス

英BP、第3四半期の利益が予想を上回る 潤滑油部門

ビジネス

中国人民銀、公開市場で国債買い入れ再開 昨年12月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中