最新記事

コロナ時代の個人情報

感染拡大は「野球に例えれば今はまだ2回の表」、米感染症専門家

MAXIMUM UNCERTAINTY

2020年6月24日(水)18時00分
フレッド・グタール(本誌サイエンス担当)

──新型コロナの感染拡大のペースが緩やかになるのは、人口の60~70%が感染してからだとあなたは言う。

(感染の第1波を)なんとか乗り越えて、夏が来れば大丈夫だという誤った考え方があるようだ。気持ちは分かる。誰だって普通の生活に戻りたい。私が言っているのは、「一時的に落ち着いても、恐ろしい嵐の前の静けさにすぎない」ということだ。

──ドナルド・トランプ米大統領はずっと、パンデミックは近いうちに過ぎ去ると言ってきた。人々に誤った期待を抱かせただろうか?

そのとおり。過去の例から見て、呼吸器疾患を引き起こす病原体のパンデミックは数週間~数カ月ではなく、数カ月~数年の単位で続く。

──夏の間にウイルスが消えてなくなるという見通しについて、あなたは恐ろしいと言う。

それが急激な感染拡大を招くだろうからだ。ニューヨークのような状況よりもっとひどく、感染者数が2~3倍になることを想像してほしい。ニューヨーク都市圏の多くの地域では、感染者は人口の20%にもならない。集団免疫を獲得し始める60%や70%には程遠い。私たちは散々苦しみ、死者を出し、経済的にも大きな打撃を受けたが、野球に例えればまだ2回の表が始まったくらいだ。

──パンデミックの次の段階は、これまでの数カ月とどう違うのか?

1月後半の時点で、このウイルスが世界中に広まっていくと私たちは分かっていた。2月後半と3月前半に感染が拡大する可能性が高く、人口密集地で最も深刻になるだろうと予想し、実際、そのとおりになった。

──今後、新型コロナはインフルエンザ・ウイルスのような動きをし、過去のインフルエンザの大流行と同じような展開になるのか。それとも、誰も経験したことのない「コロナウイルスの大流行」が起こるのか?

分かっているのは、新型コロナのような呼吸器疾患を引き起こす病原体は、感染させられるだけの人を感染させるまでは止まらないということ。当面われわれにできるのは、医療崩壊が起きないように感染のペースを遅らせることだけだ。

──検査数を増やすのは正解か。

「検査、検査、検査」とスローガンのように唱え、こだわるのはやめるべきだ。今日は2万件検査したから、次は3万件を目指そうと、まるで平均株価のような扱いだ。

必要なのは賢明な検査だ。適切な時期に、適切な地域の適切なグループに適切な検査をし、適切な結果を得る。戦略的でなければならない。

【関連記事】「接触追跡アプリが第2波を防ぐには不可欠」ジョンズ・ホプキンズ大専門家インタビュー

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イスラエル、ガザ停戦協定の履行再開と表明 空爆で1

ビジネス

米韓が通商合意、トランプ氏言明 3500億ドル投資

ワールド

印パ衝突、250%の関税警告で回避=トランプ氏

ビジネス

英住宅ローン承認件数、9月は予想上回る 昨年12月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 4
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 5
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 6
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 7
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 8
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 9
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中