最新記事

野生動物

新型コロナウイルスの流行で中国は野生動物を食べなくなるか

The Coronavirus Could Finally Kill the Wild Animal Trade

2020年2月26日(水)17時45分
リンジー・ケネディ、ネイサン・ポール・サザン

新型コロナウイルスの感染拡大によって閉鎖されるまで、中国では野生動物の肉を販売する生鮮市場が身近にあった。閉鎖後も、中国政府の管轄外の「金三角経済特区(タイとラオス、ミャンマーの国境地帯にある市場)」などで、象牙やトラの皮、絶滅危惧種の動物が公然と売られている。こうした野生動物を使った料理は高価で男らしさの象徴とも考えられているため、財力を誇示したい人々に好まれる。

野生動物を使った商品は人気が高く、中国政府は長いこと取り締まりに消極的だった。2003年にはSARSが流行し始めて4カ月目に、ジャコウネコとその他53種の野生動物の取引を解禁。だが同年12月に広東省在住の男性がSARSに感染するとこれを撤回し、ジャコウネコ、アナグマ、タヌキ、ネズミなど約1万匹の殺処分を命じた。その後、これらの野生動物の取引は(一時的に)それまでよりも目立たなくなったものの、時が経つにつれて再び公然と行われるようになった。

野生で捕獲した絶滅危惧種の輸入や販売は違法だが、野生動物を飼育して販売することは合法、という抜け穴もある。今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、中国政府は2月25日、野生動物を食べる「悪習」の根絶や違法取引の全面禁止を決めたものの、この措置が長続きするかどうかは分からない。

きれいごとは通じない

「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今後1~2年は野生動物の取引が減るだろう。感染症のリスクもある」と、感染症予防に取り組むNGO「エコヘルス・アライアンス」のピーター・ダザックは言う。「だがいずれ取引は再開される。野生動物を使った料理の一部は、文化に深く根差している」

自然保護派は、新型コロナウイルスに対する恐怖心が人々の記憶に新しいうちに、希少な野生動物の捕獲や食用消費と、恐ろしい感染症との関係を強烈に印象付けたいと思っている。このチャンスを逃せば、取引禁止の機運はまた失われてしまう。

活動家や学者、政策立案者たちは何十年も前から、野生動物の取引を終わらせるにはどのような理論展開をすべきか考えてきた。動物虐待や生態系の破壊を強調する理屈だと、遠くの知識人たちの共感は得られても、実際に野生動物を買い、食している人々を説得することはできなかった。「自然保護運動は50年前からあるが、市場の閉鎖にはつながらなかった」とダザックは言う。「SARSパンデミック(世界的流行)の時だけが例外だったが、今新たなチャンスが巡ってきた」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イスラエル首相をホワイトハウスに招待 

ワールド

トランプ氏のMRI検査は「予防的」、心血管系は良好

ビジネス

米ISM製造業景気指数、11月は48.2に低下 9

ワールド

ウクライナ、和平案巡り欧州と協議 ゼレンスキー氏が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 5
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中