最新記事

ブレグジット

英議会、メイ首相のブレグジット再交渉方針を支持 EU側は拒否の姿勢

2019年1月30日(水)08時56分

英議会は、EU離脱に関する複数の修正案を採決し、アイルランドとの国境問題に関するバックストップ(安全策)を代替措置に置き換えることを求める案を賛成多数で可決した。写真はメイ首相。ロンドンで撮影。提供写真(2019年 ロイターUK Parliament/Jessica Taylor/Handout via REUTER)

英議会は29日、欧州連合(EU)離脱に関する複数の修正案を採決し、アイルランドとの国境問題に関するバックストップ(安全策)を代替措置に置き換えることを求める案を賛成多数で可決した。EUとの再交渉を目指すメイ首相の方針を支持した格好となった。

同案は与党保守党の有力議員であるグラハム・ブレイディ氏が提出したもので、賛成317票に対し、反対は301票だった。英領北アイルランドとアイルランドの間で厳格な国境管理を復活させないためのバックストップを「代替的な取り決め」に置き換えるという内容で、この修正が行われれば議会はメイ首相の離脱案を支持するとしている。具体策は盛り込まれていない。

ただ、採決の直後にトゥスクEU大統領は報道官を通じて、バックストップは離脱協定案の一部で、再交渉の余地はないと述べた。離脱協定案は英国を除くEU27加盟国によって既に承認されている。

それでもなお、メイ首相はEUとの再交渉で「法的拘束力のある修正」を求める考えを示した。「今夜は過半数の議員がバックストップに修正が加えられた離脱案を支持する考えを示した」とした上で「合意を伴うEU離脱に下院の圧倒的多数の支持を取り付ける道筋が存在することが明らかになった」と強調した。英議会は2週間前にメイ首相とEUが合意した離脱協定案を大差で否決している。

英議会でこの日採決が行われたほかの修正案では、メイ首相が来月までに議会で離脱案の承認を得られない場合、議会に合意を伴わない離脱を阻止する権限を与える内容の2つの案が否決された。

ただ、その後、「合意なき離脱の拒否」を盛り込んだスペルマン議員の修正案は賛成318、反対310の賛成多数で可決した。3月29日の離脱日が迫るなか、合意なき離脱に反対するという議会の総意を示す内容だが、政府に合意なき離脱阻止を強いるものではなく、阻止の方法も盛り込まれていないため、実質的な効果はない象徴的な案となっている。

ポンドは、合意なき離脱回避に向けた複数の修正案が議会で否決されたことを受けて対米ドルで約0.7%下落した。

野党労働党のコービン党首は、「国全体にとって意義のある妥当な解決策を見いだす」ためにメイ氏と協議すると語った。

[ロンドン 29日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スタバ、バリスタ労組が無期限スト突入 繁忙イベント

ワールド

トランプ政権、カリフォルニア州提訴 選挙区割り変更

ワールド

米政府、独などの4団体を国際テロ組織指定 「暴力的

ビジネス

米経済にひずみの兆し、政府閉鎖の影響で見通し不透明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 6
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中