最新記事
ロシア

4期目のプーチンを襲うロシア経済危機 トランプが発表した新制裁が重荷に

2018年4月12日(木)12時20分
ロイター

4月9日、米国によるロシアへの追加制裁で、2014年の西側諸国との衝突後にようやく根ざし始めていたロシア経済の回復がとん挫する恐れが出てきた。写真はシベリア中部のクラスノヤルスクにある食料品店で支払いをする客。2015年8月撮影(2018年 ロイター/Ilya Naymushin)

米国によるロシアへの追加制裁で、2014年の西側諸国との衝突後にようやく根ざし始めていたロシア経済の回復がとん挫する恐れが出てきたと、アナリストや投資家が9日指摘した。

米国は6日、ロシアに対して新たな制裁措置を発動。16年の米大統領選介入や他の「悪質な行為」を理由に、ロシア政府高官やいくつかの大企業を対象とした。

ロコインベストのリサーチヘッドで経済発展省の元幹部でもあるキリル・トレマソフ氏は「14年以来の制裁はロシア経済に痛みを与えなかったと人々は確信している感じがする。これはまったく根拠がない。今回の制裁で西側諸国との関係は新たな段階に入った。新たな現実はかなり深刻だ」と話した。

アナリストらは制裁がロシアを何年もの低成長に追いやる可能性があると述べた。原油安やウクライナ問題による前回の制裁がもたらした2年間の低迷から回復するためロシア政府がせっかく実施してきた景気刺激策は妨げられてしまう。

プーチン大統領は3月に圧倒的な支持を得て4期目に再選されたが、有権者による経済成長への期待に応え、生活水準悪化への懸念を和らげるという圧力にさらされている。

ロシアの国内総生産(GDP)は2年の縮小の後、昨年は原油価格の上昇を背景に1.5%成長したものの、政府目標の2%には届いていない。コンサルティング会社マクロ・アドバイザリーのクリス・ウィーファー氏は原油価格が1バレル=60ドル超で推移すれば今年の成長率は1.8%になるとの見方を維持しながらも「もちろん大きな問題はロシアがそうした低成長環境にどれだけ長くとどまるかだ」と指摘した。

その上で「大統領の在任期間に経済は加速し、力強くなる必要があるが、制裁や直接投資が効いてくる。2018年は沈滞の年になる」と話す。

制裁対象にプーチン大統領に近いとされる人物以外も含まれたことで、ロシアのどんな会社や経営者でも標的になりうることが分かったと投資家は言う。

ルーブルは9日にこの3年で最大の下げ幅を記録、主要企業の株価も下げた。経済全体の指標とされるズベルバンクは17%下落、制裁対象のオレグ・デリパスカ氏が主要オーナーのアルミ大手ルサール<0486.HK>は半分以上の価値を失った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

欧州新車販売、8月はBYDが前年比3倍増 2カ月連

ワールド

米、コミー元FBI長官の起訴要求か トランプ氏が敵

ワールド

アップル、EUにデジタル市場法規則の精査要求 サー

ワールド

焦点:米同盟国のパレスチナ国家承認、トランプ氏のイ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
2025年9月30日号(9/24発売)

トヨタ、楽天、総合商社、虎屋......名門経営大学院が日本企業を重視する理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 2
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 3
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市場、売上を伸ばす老舗ブランドの戦略は?
  • 4
    【クイズ】ハーバード大学ではない...アメリカの「大…
  • 5
    クールジャパン戦略は破綻したのか
  • 6
    週にたった1回の「抹茶」で入院することに...米女性…
  • 7
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 8
    トランプの支持率さらに低下──関税が最大の足かせ、…
  • 9
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 10
    9月23日に大量の隕石が地球に接近していた...NASAは…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 5
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 6
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 7
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 8
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 9
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 10
    「ミイラはエジプト」はもう古い?...「世界最古のミ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中