最新記事

災害

ハービーはなぜ「前代未聞」のハリケーンになったのか

2017年8月31日(木)18時00分

●上陸前に、急速に発達したのはなぜか

温かいメキシコ湾の海水の影響で、ハービーは勢力を増した。また、ハリケーンの構造を阻害して水分や熱を奪う、「ウインドシア」と呼ばれる風向きや風速の急変がなかったことも勢力拡大に貢献し、ハービーは上陸前にカテゴリー4のハリケーンとなった。

「沿岸部に近づき、海水温が30度近い海の上に来るまで、特段勢力は強くなかった」と、シャノン氏は言う。

●地球温暖化など気候変動の影響はあるか

気象専門家は、ハービーと気候変動を直接結び付けることはできないと話す。ハービーを失速させ、同じ地域に長時間とどめた風の作用は偶発的なものだったとみられている。

だが降雨量の多さについては、大気中の湿度を高める地球温暖化の影響を受けたようだ、と世界気象機関は指摘。

気候変動がハービーを生んだわけではないが、それを悪化させた要因だと今後の研究で断定される可能性がある。テキサスを拠点に気候関係の会社を運営するハル・ニーダム氏は指摘する。

●大洪水を起こした要因は他にあるか

大都市ヒューストンでは、コンクリートなど水を通さない表面で覆われた市街地が広がっていることに加え、川の堆積作用でできた平地だったことも、豪雨の影響を悪化させたとシェファード氏はみている。

「ヒューストンは極めて災害に弱い街であり、そこにハリケーンが停滞し、さらに大量の降雨があった」とカマルゴ氏は語る。「1つ1つは大した問題ではないが、すべてが一度に起きたため、最悪の事態を招いた」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

Chris Kenning

[29日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

UBS、資本規制対応で全ての選択肢検討 月内に正式

ワールド

IEA「油田・ガス田の生産減が加速」、OPECは報

ワールド

アングル:中国人民銀は早期利下げ回避か、経済減速も

ワールド

貿易収支、8月は2425億円の赤字 対米自動車輸出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中