最新記事

アメリカ政治

トランプ税制改革を左右する減税効果計測のダイナミック・スコアリング

2016年12月31日(土)19時44分

 JCTの事務方トップを務めるトーマス・バーソルド氏はロイターのインタビューで、この新方式を実行する難しさがあると認め、「米経済は非常に複雑で、絡み合うすべての状況やニュアンスをすべて拾い上げる1つのモデルを持つことは不可能だ。だからモデル化で肝心なのは、余計な材料をそぎ落としていくつかの重要なポイントを強調することになる」と語った。

 ただしダイナミック・スコアリングは他の経済モデルの算定と同じく正確性には難がある。つまり財政政策に関して言えば、理論上の結果が現実の納税者や米経済に深刻な悪影響を及ぼしかねない。

 JCTは2014年、共和党のデーブ・キャンプ下院議員が提出した税制改革法案についてダイナミック・スコアリングに基づいて500億─7000億の歳入増と0.2%─1.8%ポイントの成長押し上げが見込めると推計した。

 来年出てくると予想される税制改革案は恐らくもっと複雑で、歳入や経済の見通しの幅はずっと広がるとの見方もある。

 この改革案は、トランプ氏が支持するものとライアン下院議長ら下院共和党がまとめた内容の折衷案となりそうだ。

 独立系民間調査機関タックス・ファウンデーションは、下院共和党案は長期的に国内総生産(GDP)を9.1%増やし、賃金を7.7%上昇させ、170万人の新たなフルタイム雇用を創出すると見積もる。マクロ経済からのフィードバック効果を考慮しないと10年間で2兆4000億ドルの歳入減となるが、考慮すれば歳入の落ち込みは1910億ドルにとどまるという。

 一方で中道系調査機関であるタックス・ポリシー・センターによると、下院共和党案の向こう10年のGDP押し上げは1%で、フィードバック効果を踏まえても2兆5000億ドルもの歳入が消えてしまうと予想している。

 (David Morgan記者)

[ワシントン 28日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マレーシア、対米関税交渉で「レッドライン」は越えず

ビジネス

工作機械受注、6月は0.5%減、9カ月ぶりマイナス

ビジネス

米製薬メルク、英ベローナ買収で合意間近 100億ド

ビジネス

スターバックス中国事業に最大100億ドルの買収提案
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中