最新記事

日本社会

過労による自殺問題、残業規制を改革の俎上に

2016年11月14日(月)11時07分

 11月4日、電通社員だった高橋まつりさんの自殺によって、過労死と職場における嫌がらせという難しい問題に再び注目が集まっている。写真は同社のロゴ。都内本社で2012年7月撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

 日本の一流大学を卒業し、将来有望と見られていた高橋まつりさん(当時24)は昨年4月、同国有数の広告代理店である電通<4324.T>に入社した。同社の職場文化は、激務が求めれることで知られている。

 入社から9カ月後、高橋さんは飛び降り自殺した。ソーシャルメディア上では、高橋さんの過酷な労働時間や上司の嫌がらせを示唆する言葉に対する怒りが巻き起こった。

 日本の厚生労働省は先月、高橋さんの自殺について、過労を原因とする労災と認定。電通社内で長時間労働がまん延しているのかどうか立ち入り調査を行った。

 日本では、労働基準法第36条によって、通称「36(サブロク)協定」と呼ばれる労使協定を締結し届け出た場合には、協定で定める範囲内で1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて労働させることが可能となっている。

 協定の範囲内であれば、割増賃金や時間外労働の限度は、雇い主と大抵はおとなしい労働組合の裁量にまかされている。多くの日本人の目には、高橋さんの死は、こうした現状の悲劇的な結果として映る。

 こうした現行法の抜け穴が改善される可能性も出てきている。安倍晋三首相は9月、第1回「働き方改革実現会議」を開催し、広範囲に及ぶ雇用改革に着手。時間外労働に対し、企業により厳しい規制を求めることも検討の対象となっている。

「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表は、現行法では、月45時間の上限を超える水準で時間外労働を設定することが可能だと指摘。労働組合も企業側のそうした設定に合意するため、組合にも責任があるとの見方を示した。

 こうした支援団体によれば、企業は社員、特に新入社員に対し、過度の時間外労働をしばしば強要するという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人・失業率4.6

ビジネス

ホンダがAstemoを子会社化、1523億円で日立

ビジネス

独ZEW景気期待指数、12月は45.8に上昇 予想

ワールド

トランプ氏がBBC提訴、議会襲撃前の演説編集巡り巨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中