最新記事

原発

日立・東芝・三菱重、原発燃料事業を統合 再稼働遅れが影響 

2016年9月29日(木)18時07分

9月29日、日立製作所、東芝、三菱重工業の原子炉メーカー3社が原子力発電所で使う燃料事業の統合に向けて調整していることが分かった。年内にも基本合意し、来年春の統合を目指す。写真は燃料プール、2015年4月フランスで撮影(2016年 ロイター/Benoit Tessier)

 日立製作所<6501.T>、東芝<6502.T>、三菱重工業<7011.T>の原子炉メーカー3社が原子力発電所で使う燃料事業の統合に向けて調整していることが分かった。国内原発の再稼働が進まず、燃料事業の収支が悪化していることが背景にある。関係者によると年内にも基本合意し、来年春の統合を目指す。

 日立の広報担当者は29日午前、ロイターに対し「検討しているが決定した事実はない」と述べた。東芝と三菱重は、「さまざまな可能性を検討しているが、現時点で決定した事実はない」とするコメントをそれぞれ開示した。

 主に濃縮ウランを使う原発燃料は、3社を通じて日本国内の電力会社に供給されてきた。

 具体的には、1)米ゼネラル・エレクトリック、日立などが出資する米グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)の日本法人、2)東芝子会社の米ウエスチングハウスが過半を出資する原子燃料工業、3)三菱重工が95%出資する三菱原子燃料──があり、この3社を来年春に統合するよう調整が進んでいるという。

 2011年3月の東京電力福島第1原発事故を契機に軒並み停止した日本国内の原発は、3年前に始まった新規制基準審査の長期化に加え、司法判断による稼働停止命令もあり、再稼働のペースが想定を超えて大幅に遅れている。

 国内原子炉メーカーには、規制基準に対応する電力会社からの工事・機器の注文が入る一方で、再稼働しなければ消費が進まない燃料については事業収支が悪化しており、事業統合の必要性が浮上した。

 福島原発事故に伴い国内原発の新増設が困難になったことから、原子炉事業の統合の可能性も取りざたされてきた。ただ、「総論賛成でも各論となると利害関係が複雑で、とても数年間でまとまるような案件ではない」(業界関係者)との見方も根強い。燃料事業の統合構想が、原子炉事業の再編に発展するかどうかも焦点になりそうだ。

 
(浜田健太郎 山崎牧子)

[ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

タイ経済は来年初めに回復へ、家計債務救済策を準備=

ビジネス

米シティがコインベースと提携へ、法人顧客向けデジタ

ビジネス

メタプラネット、発行済株式の13.13%・750億

ビジネス

世界のM&A、1─9月は前年比10%増 関税など逆
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下になっていた...「脳が壊れた」説に専門家の見解は?
  • 4
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 7
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 8
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 9
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中