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アップルEU追徴税、米企業の資金還流促進でドル高か

2016年9月21日(水)10時12分

 9月15日、米アップルは、アイルランドから受けている税制優遇措置が欧州連合(EU)から違法とされ、追徴税の支払いを求められた。写真はアイルランドのゴールウェイ州にあるアップル店の前を通り過ぎる男性。8月撮影(2016年 ロイター/Clodagh Kilcoyne)

米アップルは、アイルランドから受けている税制優遇措置が欧州連合(EU)から違法とされ、追徴税の支払いを求められた。この問題の副次的影響の1つとして、米企業が海外に滞留させている利益を本国に戻す動きが促進されるならば、ドルにとっては一方的なプラス材料になるだろう。

米企業の海外留保利益は、推定で2兆1000億ドルに上る。そして大統領選を争う共和党候補ドナルド・トランプ氏とヒラリー・クリントン氏はいずれも、こうした利益の還流を促す措置を打ち出すと公約している。

2005年には当時のジョージ・ブッシュ政権が制定した本国投資法で資金還流への適用税率が大きく引き下げられたため、約3000億ドルの海外留保利益が米国に戻った。この間、資金還流がどの程度為替レートに影響したかについて議論はあるものの、ドルはユーロで10%程度、対円で15%それぞれ上昇した。

モルガン・スタンレーは7月に公表したリポートで「米企業の海外留保利益が過去最大になっているという事実が、新たな資金還流促進税制が導入された場合、05年よりもドル押し上げ効果が大きくなる理由の1つだ」と説明した。ただしこれらの利益は、ヘッジされていない外貨建て金額が誇張されている面があるという。

モルガン・スタンレーの分析によると、海外留保利益の56%は欧州に再投資されており、このうち12%はアイルランド、19%はオランダ向けだ。バミューダやシンガポールなど伝統的な租税回避地向けの割合は7%となっている。

もっとも海外留保利益をさらに詳しく調べると、大半はドル建てのまま保有されている実態がうかがえる。つまり為替取引はまったく、あるいはほとんど必要ない形になる。

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