最新記事

サイエンス

ノーベル物理学賞、英独米3氏に ブラックホール研究の成果で

2020年10月7日(水)00時35分

スウェーデンの王立科学アカデミーは6日、2020年ノーベル物理学賞をブラックホールの研究で成果を上げた英国のロジャー・ペンローズ氏とドイツのラインハルト・ゲンツェル氏、米国のアンドレア・ゲズ氏に授与すると発表した(2020年 ロイター/TT NEWS AGENCY)

スウェーデンの王立科学アカデミーは6日、2020年ノーベル物理学賞をブラックホールの研究で成果を上げた英国のロジャー・ペンローズ氏とドイツのラインハルト・ゲンツェル氏、米国のアンドレア・ゲズ氏に授与すると発表した。

英オックスフォード大教授のペンローズ氏はブラックホールがアインシュタインの一般相対性理論に基づいて形成されることを数学的手法を用いて証明。マックス・プランク研究所と米カリフォルニア大バークリー校に務めるゲンツェル氏と、同大ロサンゼルス校のゲズ氏は銀河系の中心部の星周辺に目に見えない非常に重い物体が存在することを発見した。賞金1000万クローナ(110万ドル)の半分はペンローズ氏に、残りは他の2人に分配される。

ゲズ氏は物理学賞を受賞する女性として4人目。1903年のマリー・キュリー氏、63年のマリア・ゲッパート=メイヤー氏、2018年のドナ・ストリックランド氏に続く。ゲズ氏は他の人たちの励みになることを望むと話した。

アインシュタインは1915年に説いた一般相対性理論で、重力の力で時空間が歪むと予測。ただアインシュタイン自身、ブラックホールを信じておらず、科学者はその後半世紀にわたりその存在を証明する方法を探究した。現在89歳のペンローズ氏は1965年に公表した研究論文でブラックホールが実際に形成されることを証明。詳細を説明したほか、ブラックホールの中心に時間と空間が存在しないという考えを示した。

その後、ブラックホールを探す研究は「いて座Aスター」と呼ばれる天の川銀河の領域に存在するちりに焦点が当てられた。ゲンツェル氏とゲズ氏が率いる天文学者チームは星の動きを観察し、太陽の約400万倍の質量が太陽系ほどの規模の領域に詰まっているとの結論を導き出した。

長期化する新型コロナウイルス危機を受け、今年のノーベル賞は恒例の祝賀会の大半が中止される。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 岐路に立つアメリカ経済
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月3日号(5月27日発売)は「岐路に立つアメリカ経済」特集。関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

関税の即刻見直しかなわないなら、合意は困難=日米交

ワールド

トランプ氏、中国の関税合意違反を非難 厳しい措置示

ワールド

中国、ブラジル産鶏肉の輸入全面禁止 鳥インフル発生

ビジネス

マクロ系ヘッジファンドへの関心高まる、市場の変動に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中